水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

信濃川大河津分水(新潟県燕)

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県名自体が「池」

「新潟県」・・考えてみたら県名そのものが「池!」と宣言しているようなものである。「潟」(かた、がた、せき)というのは湖沼の一形態。確かに新潟市には市内にどんと鎮座する鳥屋野潟をはじめ、いくつもの潟と呼ばれる池が点在している。
でも、「新潟」という池は見たことがない。
雨だったこの日、信濃川河口から30kmほど上流にある信濃川大河津資料館に行った。
大河津分水公園として水辺に親しめる公園として整備されており、無料で資料館に入ることもできた。
雨で来館者がいなかったこともあり、資料館の案内の方に、いろいろ話が聞けたのは幸いだった。
まず冒頭のイラストのように、越後平野は6千年前は一つの潟湖だったと聞いて驚愕。霞ヶ浦、いや琵琶湖にも迫る巨大湖が、たった6千年前にこの地に・・。
陸化したあとも水はけの悪い低湿地だったため、人が生活していくためには排水を行う必要があった。

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信濃川の水をバイパスで日本海へ逃がす

信濃川が越後平野に入る前に、山を突貫した10kmの水路で日本海に余分な水を逃がすという発想は、江戸時代にはすでに工事請願というかたちで見られた。
発想としては江戸時代にバイパス水路が造られた利根川と同じだが、こちら信濃川の方は水をめぐる下流側の思惑や誤解もあり、工事が実際に始まるまで200年もの歳月が必要だった。明治になってからの工事は当時、東洋一の大土木工事。
このへんのお話は館内の映画でも見ることができる。

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余分な水と必要な水をコントロールする自在堰

必要な量の水だけ信濃川本流に流し、それ以上の水はバイパス(大川津分水路)へ。そんな都合よく、というのを実現させるための設備が二つの堰。本流側と分水側のそれぞれの堰を連携させることで、流量をコントロール。
初代の堰であるベアトラップゲートを持った自在堰(起伏堰)の仕組みに感激。
資料展示あり。動画もとっておきました。


www.youtube.com


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本流と分水を一望

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展望室からは本流と分水を一望できる


 

ヤバすぎるぐらいカッコいいラジアルゲート

堰堤天端を越えて突き出た巨大な油圧シリンダーがメカメカっぽくてシビれました。
ラジアルゲート上部に微調整用のフラップゲートも、ゲートマニアには萌えポイント。

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本流側の堰

水位差を越えて船を通すための閘門もあり、マニアックな堰。魚道観察もできる。

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「新潟」の名の由来

ところで新潟。そのような名の池はない。洪水跡にできた新しい池を漠然と指す言葉という説もあり、資料館の案内の方も「言われてみれば、なんで新潟っていうんですかね」と首をかしげていた。
意外なことに、「新潟」という言葉が文献に初出するのは、なんと戦国時代・・。明治になって造られた言葉かと思ったら、越後に負けず古風な言葉だったようだ。

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Googleマップ

マークした場所は駐車場。