水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

十三軒溜池(岩手県奥州)

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大きな魚がつくった波紋が

一見すると森にすっぽり囲まれた池のように見えるが、周辺は胆沢平野の豊かな農地が広がる。池の取り巻きのように木々を従えさせたのは意図してのものだろう。おかげで貯水池機能だけでなく、多様な生物が暮らす環境保全にも大きく寄与している。
水面をまばらに覆った水草を揺らして、巨魚のヒレがひらりひらりと波紋を広げる。なんと豊かな光景か。
といっても一帯は胆沢川の河岸段丘の上にあるため水を引き揚げることが容易ではなく、現在のような美田が広がる農地ではなかった。戦後の食糧増産プロジェクトによってダム、溜め池、水路、円筒分水を連携させた利水設備が整備されて初めて実現したのである。十三軒溜池も昭和の築造ということだった。
中山間地域総合整備事業からの補助金と地域各戸の出資によって体育館併設の「水の郷 未来館」が池畔に立つ。
ほか、案内板と駐車場あり。

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木々に囲まれた十三軒溜池


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特徴的な構造が目を引く池である。
堰体サイド(左岸側)にも水門があり、渓流を模した人工水路となって水の郷 未来館を横切っている。これが流れ込みのようである。
この水路は池に流入する直前で二手に分岐している。先は藪が深くて水路をたどれなかったが、航空写真で見ると水路は堤体を袈裟懸けに下って堤の基部、さらに下に広がる田畑への水路に合流している。
この合流ポイントには円筒分水らしきものも見える。どのような運用がなされているのか興味深い。

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堰体左岸側の水路と水門


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堰体左岸側水門に通じる水路は人工渓流風


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案内板と記念碑と駐車場
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カーナビの現在地マークの場所に「十三軒溜池 駐車場」の入口を示す看板あり(左写真)


マークした場所は十三軒ため池の駐車場。