信越の国境いの稜線上にある山池
信越トレイルと関田山脈の地形
国境いの稜線に沿っていくつもの峠が
越後と信州の国境をなす関田山脈には、昔からいくつもの峠越えの横断路が二つの国を結び、関田峠を始め、魅力的な峠たちが縦列している。
標高千メートル前後の長い稜線は、信越トレイルという縦走コースを歩けるようになっており、峠を次々とハシゴしていきながら、いつの間にか数え切れないほど長野と新潟を行き来することになる。
テーブルトップ状の稜線
国土地理院の地図を見ると、宇津ノ俣峠と伏野峠の間の区間の標高千メートルの稜線上に、小広いテーブルトップがあり、長野県側に池が刻印されている。名は見あたらない。
おそらくはこの池が信越トレイルのオフィシャルサイトで「幻の池」として紹介されているものだろう。モリアオガエルやクロサンショウウオが生息しているということで、最近、Googleマップでも「信越トレイル・幻の池」としてマークアップされた。
標高770mの大池
この池から直線距離で500mほど新潟側に下った標高770mの山肩にも、周囲長500mほどの池が穿たれている。のちにこれは大池という名の溜め池であることが分かった。
地形図で見る限り、この隣接する二つの池に通水関係はなさそう。
新潟県側から
屏風のような切り立った崩壊地形。
長野県側から
新潟県側からとは対照的に片流れの地形。
なぜ「幻の池」?
池の地形と形態
関田山脈には似たようなテーブルトップ状の稜線が点在しており、尾根上の池は大小複数ある。
規模は想像していたより大きかったが、特別な幻感というようなものも感じず、なぜこの池だけ「幻の池」というキラキラネームになったのか分からない。
流れ込み
この雪渓が流入口だろうか。
池名について
全国の池をめぐっていてインフレ気味の「幻の池」に出くわすたびに、うーん、と思ってしまう。特に大雨のあとに現れるような池は別に幻というわけでもない。雨後出現湖として区別した方がいいと思う。
作家や文学者が池に命名した事例も全国にいくつかあるが、どれもちょっと凝り過ぎというか漢字が難しすぎて親しみにくい気もするし、名山の名前みたいに、ふつうに土地の人たちが呼ぶ方言なり地名なり、素朴なものでいいと思う。
池の通称(観光名)を改名した事例もひとつ。岐阜県の通称「モネの池」は、SNSで誰かが言いだしたキラキラネームが定着しそうになったことを危惧した市の主導で「名もなき池」に改称したなんていう事例もある。
幻といえば・・
池の周囲でふわふわ飛翔していた真っ白で雪の妖精のような虫。この虫の方が幻を見ているような不思議な感じ気がした。
幻の池へのアプローチ
伏野峠からと牧峠からの二つのアプローチ方法がある。いずれも稜線歩き。
伏野峠からのアプローチ
伏野峠から稜線上のハイキング路を2キロほど。往復3時間。
登山口手前のゲート
登山口は峠にあるが、峠は冬季閉鎖期間が長いため、訪れた6月の段階では手前の車止めゲートから先は徒歩となった。
登山口
ここから稜線歩きで西に向かう。
登山路
稜線歩きとはいえ、多少のアップダウンはある。
途中で見つけた小さな沼
モリアオガエルの卵あり。標高1,035m。
池の手前の分岐
くぼ地になっているようだが、ここで霧が出てきて地形がよく見えない。考えようでは、霧や雨の通り道に池が立地しているともいえるかも。
池の手前の雪渓
わずかだが雪渓を下るかっこうになった。軽アイゼンをザックにしのばせておけばよかった。
データ
牧峠からのアプローチ入口
こちらからはまだ試したことがない。