東京板橋というところは、なかなか奥深い池さんぽエリアである。町中にあった案内地図看板に知らない池の存在を教えてもらい、へえ、じゃあ行ってみようかと、特に目的もなかった散歩に彩りが加わる。
そんな感じで、ここ薬師の泉にたどり着いた。
クルマが激しく行き交う中山道は、このあたりでは国道17号でもある。その歩道わきに小さなくぐり戸があって、一歩入ると眼下のくぼ地に箱庭のような池がうずくまっていた。
1800年代に描かれた「江戸名所図会」にも活写されており、中山道清水坂を階段で下ったくぼ地に池がある構造は、なるほど今と変わらぬ。
池泉のほとりのあずまやにしばし憩い、またあてもない町歩きへ。疲れたら電車もバスもある。別にどこと決めずに乗る。
日が暮れたら提灯の灯った酒場に誘われ、やれやれ少々飲みすぎたか。知らない町で宿を探す。はて、ここはどこだ。