水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

大水足池(未確定)(山口県長門)

【おおみずたり / 大水足堤の可能性も】

日本海に突き出した向津具半島(むかつくはんとう)は、漁港と棚田が共存する半農半漁の里。じつはこの半島、全国5位の池数を誇る山口県のなかでも最強の池密エリアだったりする。
その先端には陸繋島のように細く半島とつながった油谷島(ゆやしま)があった。クルマでは離合困難な道しかなく、昭和がそのままタイムカプセルされたような不思議な島空間だった。
航空写真でこの池を見たとき、山を背負う海岸という立地からシンプルに海跡湖だろうと思っていた。ポンプ施設のような小屋らしきものも池畔に見えたので、少なくとも何らかのアプローチ方法があるはずだ。山の道路側から管理道で入れるかもしれないし、だめでも海岸伝いに歩けば会えるだろうと思っていた。

海岸側から見た様子。断崖が少しくぼんでいるあたりに池があるのだが、這い上がる以外、アプローチする方法が見あたらない

しかし現実はまったく異なっていた。
地図や航空写真では分からなかったが、池は海岸にせり出した断崖の上にあった。海岸からのアプローチしようにも、崖を這い登るしかない。山側からアプローチ路がありそうなものだが、藪に埋もれてしまったのか、進むにはハードな藪漕ぎが必要そうだ。
池畔のあの小屋はいったい何だったのか? 何に利用されていたのか。そもそも天然の池なのか、人工の池なのか。あまりに不思議な池だった。
 
→その後、全国Q地図(2020年9月全国農業用ため池マップ)において「大水足(おおみずたり)」という名の堤高2.6mの溜め池として掲載されているのを見つけた。ただし「堤体除去等により廃止」となっている。一方、2022年11月時点の山口県のオフィシャルため池データベースに記載はない。

海跡湖のような立地だが、池は断崖の上にある


山側から池方面を見る。木々が伐採されているのか藪が池までつづいている


海岸へのアプローチ入口。スピアフィッシング、サーフィンは禁止