しらちこ。
長崎県で唯一の天然湖は、大災害で生まれた日本一小さい「湖」
白土湖は、江戸時代後期、1万5千人もの犠牲者を出し日本史上最悪の噴火・地震災害となった「島原大変肥後迷惑」の際に、地下水が噴き出して町なかに生まれた比較的若い天然湖沼。
最大時には湖周長3km級の立派な湖になったというが、人力で排水する努力がなされ現在は周囲長500mほどのこじんまりとした姿で市街地の中にたたずんでいる。長崎県では唯一の天然湖でもある白土湖は「日本一小さい湖」の有力候補でもある。
湖が大きくなりすぎて街道が寸断
江戸時代の誕生直後の白土湖は現在の四倍の規模にまで大きく成長してしまい街道が寸断し生活に支障が。
人力で排水路(音無川)を造って復旧・復興に努め、道路拡張による埋め立てなどを経て、現在は周囲500mクラスにまで小さくなったという歴史を持つ。
人間の都合で排水した天然湖沼
日本の水普請文化において、多くの場合は自然河川に人の手で堤を造り水を貯留する方向に向けられているのに対して、ここ白土湖では多くの水をたたえた天然湖沼に人口水路を築いて水を抜くという逆のベクトルが生じた点がおもしろい。
白土湖の形態と景観
日本でイチバン小さな陥没湖?
江戸時代の大地震の際、島原城下町の裏山にあたる眉山が崩落し、大量の土砂が町をのみこみ有明海を1km近く埋めた。土砂のエネルギーによって発生した津波は対岸の熊本や天草で多くの犠牲者をだしたという。
島原では陥没した場所に突然、大量の水が湧きだし、流出した土砂によって堰き止められ白土湖が生まれた。
成因タイプとしては構造湖というべきか断層湖というべきか。そこに砂州発達の潟湖的な要素も加わっているし、その後、大幅に人の手が入っていることを考えると成因タイプの区分が難しい。
公的な「湖」として日本一小さい?
日本一小さい「湖」については当ブログでは全国調査をもとに有力候補を二つ紹介してきたが、実際には過去に「湖」であったけど今はただの小さい池になっているとか、スペック的にはどう見ても沼というべきものだった。
さてここ白土湖も正直いうと「湖」とするには深さが足りないだろう。それでも過去に湖だった来歴を考えれば有力候補に入れてもいいのかと思ったが、地理院地図には「白土湖」の名称が記載されていない。要するに公的には白土湖という呼称が認定されていない可能性がある。ということで、もう少し調べてみる必要がある。とりあえず保留。
水草の繁茂状況
左が2023年、右は2016年。
水草除去船
ユネスコジオパークのジオサイト
八角形の教会が湖畔に
島原教会堂が湖景のアクセントになっている。
白土湖の構造と周辺環境
人工の流出河川「音無川」
白土湖の南側に吐き出しがあり、音無川は道路交差点の下をくぐって開渠となり、およそ4kmを標高差わずか4mで音もなく下り海へと注ぐ。
北側の接続水路
ゴミよけネットにかかった藻類の向きから池から水が流出していると思われるが、この水路の流末は地図では不明。
水路にかかる橋は「おとなしがわ2号橋」と銘打たれている。となると反対の南側にある音無川と同じ人工水路で排水(配水)用に造られたものか。
町を流れる用水路の供給源とも考えられるが調査継続項目。
北側の共同洗濯場
水路わきの岸には共同洗濯場跡が残されている。
北西岸の公園
西側の接続水路
これも同じく町の用水路への供給口と思われる。この水路は地図に記載されていない。下の写真では右が白土湖で水路は左へと流れており橋がかかっている。
耳洗公園の共同洗濯場
白土湖から吐き出された水は水路によって町に配水されている。
耳洗亭跡の耳洗公園では、かつての共同洗濯場が残されている。
白土湖通り側(東岸)の句碑・記念碑
南西岸の駐車スペースと大灯籠
白土湖に生息する動植物
錦鯉が泳ぐ(釣り禁止)
湖では金色の鯉が悠然と泳ぎ、ほかに鮒、草魚もいるようだが釣りはしないでくださいとの看板あり。
植物
マップ
ニッポン湖沼図鑑マップ