水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

神谷ダム(兵庫県姫路)

こたにだむ。神谷池。
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池の異端児なのか先端児か?

池のまわりの地形がおかしい。あるはずの流入河川もなければ、水源涵養林らしきものも見あたらない。
ダム湖を縁取る山は奥行きがなく、切れ落ちた山の向こうには町と農地が広がっている。ダム湖から3kmほど西側に市川が流れているが、じつは満々とたたえられた湖水はこの市川から電動ポンプで汲み上げられたものなのだ。いってみれば電力湖である。
基本的にダム湖やため池は川の一部を堰き止めることで生まれる。だから、ふつう「池」と呼んでいるものはほぼ、日本の法律上では「河川」に分類され、河川法の中で規定・運用されている。流入河川も流出河川ももたない池や湖は、名前や見た目がどんなに素晴らしくても、河川法上では、ただの水たまりと同じ扱かいになる。
そう聞くと河川から3kmも離れたところに、ぽつねんと造られた神谷池がちゃんと河川法の庇護を受けられるのか心配になるところだが、地下トンネルとはいえ河川とつながっているので、「水たまり」と揶揄されることはない。
このように河川からはずれたところにある池などを、専門家は「河道外貯留施設」と呼ぶようだ。
都市における地下貯留施設や、複数のため池をネットワーク運用するため導水管でつないだファームポンドもこれに含まれる。揚水式発電の上部調整池で見られる流入出河川のない池もこのなかに含まれようか。
江戸時代のため池でも、河道外に水路をひいて造られた皿池タイプのため池もある。
ただ川とは違う場所に池を造ることは水利権が複雑化することや河川環境における影響が少なくないことから、これほど大規模なものは簡単には実現できないようだ。
国土交通省のホームページでは、下記のような見解が記されている。

個別具体的に検討を行った上で許可した事例としては、取水可能な豊水を河道外の貯留施設に貯留して取水利用が安定的に継続可能となるような工夫を行い、水利使用の実行の確実性が確保される水利使用である場合において、水系全体における今後の水資源開発の展望、取水管理方法等を総合的に検討の上、特例的に許可を与えているものがある。

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電気を使うことで成り立つ贅沢さへの罪滅ぼしというわけではないだろうが、2016年に南向きのロックフィルな緩傾斜のダム斜面を埋め尽くす壮大な太陽光パネルが設置された。
このあたりは池を利用した太陽光発電の先進地で、堰体斜面に設置するタイプでは権現湖が先陣を切り、湖面上に設置するタイプでは逆池が世界最大級のメガソーラーとして大きく報じられ、のちに平荘湖にも設置された。
池に行くにはクルマ止めのゲートから2kmほど上りの舗装路を歩いていかなければならない。ゲート横のすきまに「犬の散歩をする人はここから」という内容の貼り紙があり、ダムまで散歩するジョガーもいたので見学する分には問題なさそうである。

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マークした場所はゲート。