水辺遍路

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稚児ヶ池(宮崎県西都)

ちごがいけ。
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長千代丸の人柱伝説と、千葉から贈られた大賀蓮。

町中といっていい場所にあるのに、大賀蓮が水面を覆った水面は濃厚な何かの気配を感じる池です。というのも稚児池という名は池の名前としてはいわくありというか、何もなければこういう名前はつけません。
と同時に往年の少年ライギョハンターにとって「稚児池」という名は、日本最高記録の121cmが出た聖地。名が同じというだけでなく、この気配感。枯れた蓮のあいまに、三尺、四尺の棒のごとき背びれが浮かんでいやしまいかと幻影に誘われ、つい目をこらしつつフロッグをキャストするも、何も起こらず、これが現実。
それにしてもこの、池全体からむんむん迫る気配は何なのでしょう。
池には、こんな伝説がありました。
室町時代、この池が稚児ヶ池ではなく鶴ヶ池と呼ばれていた時代のこと。大雨で池の堤が崩れたとき、池の底に埋められた黒大蛇と白大蛇の怨念のせいだという噂が流れ、人柱を立てるしかないだろうというふうに大人の話はまとまりかけた。もうたいがいに困り果てるとそうなるものなのである。大人は。しかし誰を、となると誰もが口を閉ざす。何かの拍子に自分んとこの娘なんかに降りかかると困るし。
そのとき通りかかった十四歳の少年が、神妙な顔で妙なことを言う。
「明日早うに、薄黄いろいの着た人が通ります。そん人が人柱によろしかろ」
大人たちはそれをお告げのように、なるほどとうなずきあい、「いやー、えがったえがった」と安心して家路についた。何とも他力本願というか無責任な話である。
翌朝、お告げどおりに黄色い着物を着た人がやって来る。捕まえてみると、昨日の少年だった。これは自作自演ではないか、騙されたかと怒った大人らは、よしこれを理由に人柱にしたると脅す? 脅すだけじゃなくて、そのままほんとに埋めちゃう? なんてずるいことを考えたりしていたが、少年の方はけろりとした顔で「では、」と言うや、みずからの腹を十文字にかっさばいてしまった。
いやはや自分から人柱を買って出るとは見上げた少年よ、と思う一方、十文字に切腹するのが前例になってしまうと、今後、人柱のなり手が減っちゃいそうだなあなどと、また勝手なことを考える大人たちの心配をよそに、この長千代丸という少年の人柱がたってのち、堤が切れることは二度となかったといいます。

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