水辺遍路

実際に行った池やダム 9,650ヶ所を掲載

四尾連湖(山梨県市川三郷)

【しびれこ / 神秘麗湖、志比礼湖】
f:id:cippillo:20210908112824j:plain

f:id:cippillo:20210908112820j:plain

首都圏からも日帰り圏内。手軽な天上の楽園。

外輪山にぐるりと囲まれた標高850mの山上湖。「ゆるキャン」など映画やドラマをはじめ、メディアで採りあげられることも増えて注目度は高まる一方の水辺である。
それもそのはず。首都圏から近いのに、天上の楽園という言葉がぴったり。富士五湖エリアにありながら、ややはずれの県道観光線のどん詰まりに位置するため、穴場的な雰囲気があるのも魅力のひとつだろう。

f:id:cippillo:20210908092456j:plain

 

神秘の湖というほかない

流入河川も流出河川もなし!

湖周長1.2kmでほぼ円形の湖には、流入河川も流出河川も見あたらない。標高850mの山上に独立して鎮座し、周囲には類するような池もない。神秘。
一方、少雨の年は水位の低下に伴って水質の悪化も見られ、映画の聖地巡礼などで訪れる人が多くなったと聞いて心配していたが、2021年現在も、飛び込んで泳ぎたくなるような透明感が維持されていて、ほっとした。

f:id:cippillo:20210908092433j:plain
水明荘内に展示された四尾連湖周辺の地形ジオラマ

微妙に謎な成因

外輪山はあれど、火山由来にあらず?

蛭ヶ岳の山肩に立地する天然湖。
コロッセウムのように外輪山にぐるりと取り囲まれたような地形のため、ずっと火口湖と思っていたが、違うと知って驚いた。

f:id:cippillo:20210908114906j:plain

過去にはカルデラ湖説も

過去には専門家の間でもカルデラ湖説もとられていたが、現在では大規模な山体崩落によって生まれた陥没に水がたまった構造湖(陥没湖)という見立てのようである。

f:id:cippillo:20210908121805j:plain
対岸側から見ても、奥の山斜面との間に、リング状の外輪山に囲まれていることが分かる

構造湖(陥没湖)で決着?

構造湖といえば琵琶湖や諏訪湖が代表例で、ややこしいことにカルデラ湖も含まれる。大きいものばかりかといえばそうでもなく、島原半島(長崎県)の白土湖のように四尾連湖よりも小さなものもある。
しかし地形をいくら見ても、どのような崩落によって四尾連湖のような流入河川も流出河川もない陥没湖ができるのかピンとこない。
今後、外輪山など歩いて空撮資料をもっとたくさん撮って検証してみたい。

bunbun.hatenablog.com

f:id:cippillo:20130808105436j:plain

水の出入口は?

四尾連湖に行くたびに、流入河川と流出口を探しているが、いまだに見つからない。ふつうはちょっとした流れ込みの沢ぐらいあるものだけど、四尾連湖にはスキがない。
これだけ人が訪れるようになっても水がきれいなのは、それなりの量の水循環があるはず。うーん・・。いつも悩まされる。
徹底調査をしようと意気込んでのぞむが、楽園感につい惑溺。釣り、ボート、遊泳、飲酒に興じてしまって・・。

f:id:cippillo:20210908114859j:plain

f:id:cippillo:20210908114911j:plainf:id:cippillo:20210908112829j:plain


 

池伝説と湖名の由来

四つの尾をもつ龍神

八つの尾をもつヤマタノオロチならぬ、四つの尾の「尾崎龍王」といおう龍神が池ヌシ。
「四尾連湖」の名はそれにちなむ。ほか、「志比礼湖」(しびれのうみ)、「神秘麗湖」とも。これだけ異字があるのもめずらしい。
霊場「富士八海」のひとつに数えられる。

牛の頭を沈める雨乞い神事

池伝説に登場する池ヌシとしては、大蛇(竜)に次いで牛が多い。
もともとは竜が池ヌシであったここ四尾連湖でも、江戸時代ごろの伝説では池ヌシが牛になっている点で興味深い。
牛の頭(あるいは牛馬の骨)を湖底に沈めて雨乞いする神事も行われていたというが、いつごろまで?
以下、市川三郷町のオフィシャルサイトから。

四尾連湖は、昔から雨乞いの伝説がありました。
今から三、四百年前のこと。二人の兄弟づれの侍が湖に住む怪牛を射止め、兄弟も犠牲になったそうです。この年はひどい干ばつでしたが、兄弟の犠牲が通じたのか、間もなく大雨が降り出したといいます。それ以来、干ばつの時には、兄弟の墓に詣でて牛の頭を湖水に沈めて雨乞いを行ったと伝えられています。
(市川三郷町オフィシャルサイトより抜粋)


 
f:id:cippillo:20210908122336j:plain

レジャーレイクとしての完成度

有料だけど何でもオーケーの寛容さ

遊泳、釣り、カヤック、SUP、貸しボート、ペット同伴、焚き火、バーベキュー、キャンプ、ロッジ、山荘、と・・水辺アクティビティのほとんどをカバーする勢いの池には、じつは、そうそうはお目にかかれない。
釣り禁止だったり、ペットがダメだったり、全国の五つ星の池たちのほとんどでも、惜しいところで何かが欠けている。
トイレと散策以外の多くのアクティビティが有料である点は大きな欠点かもしれないが、もしすべて無料だったら立地やキャパシティ的に環境の維持はのぞめない。そういった点で、かえってよかったと思う。

f:id:cippillo:20160827094730j:plain

ほどほどのスケール感

近くにある本栖湖もレジャーレイクとして素晴らしいが、ボートでも強風に見舞われると戻れなくなったりするし、水深121mと聞けば泳ごうにもゾッとする。
その点、四尾連湖は歩いてよし、泳いでよしのサイズ感が絶妙なのである。

f:id:cippillo:20210908122749j:plain

野営ライクで玄人好み

山荘、ロッジ、キャンプ場もあるが、オートキャンプ場のような利便性や快適なトイレとはほど遠く、野営本来の魅力を知る玄人好み。ゆるキャンならぬハードキャン。
駐車場から野営場まで、キャンプ道具をボートやカヌーで搬送。一輪車を借りて湖畔から運ぶこともできるが、ここはボートを借りての搬送で気分を高めたい。
人界を離れた満天の星が降り注ぐ水辺に流れる時間は何ものにも変えがたい。

f:id:cippillo:20210908151853j:plain

釣り

過去には池ヌシというしかないほどの巨鯉がいた。山荘の壁に魚拓が掲げられているが、もはや昭和ロマン。こんな魚はもういないだろう。いや、あるいはひっそりと深い湖底に?
桜の時期にヘラブナ釣りで人気を博した時期もあったが、近年の釣り人はもっぱらバサーが中心。魚影は比較的濃い状態を維持しているがハイプレッシャーかつ20センチ前後が主体。
全周にわたって足場はよいが、キャンプ、カヤック、SUPなどさまざまなレジャー客が混在するので、人が多いとなかなか思いどおりの釣りにはならないだろう。それでも40オーバークラスはいる。
釣りには環境協力金400円が必要。

魚種・魚影と過去の釣況

2015年夏は水量、水質(透明度)ともに近年では最高の状況だったが、2016年は夏前半の少雨の影響が見られ水位が低く、水質的にも若干の濁りがあった。
ブラックバスは小型を中心に2015年ほどではないものの、ある程度の数が見られた。30〜45センチほどの魚体も若干数、確認できたが、これらの大きな個体は回遊せず一定の場所に居着く傾向が見られた。小型のオイカワなど見向きもしない。何を食べているのだろうか。

f:id:cippillo:20130808104239j:plain
バタフライによる波動で飛び出す魚を目視しながら魚影調査する筆者(2013年)


2016年夏はベイトフィッシュのオイカワが大量に繁殖していたのが印象的だった。朝夕のフィーディングタイムには、浅場でオイカワを追う小型ブラックバスの軽い水音があちこちに立っていた。
四尾連湖の特徴として、水面に浮いている虫に対してブラックバスはいっさい反応しない。ルアーに対してもかなりシビアで、ミミズなどの生き餌に対しても慎重である。SUPからのテンカラ釣法でブラックバスは釣れたが、オイカワはチェイスするものの魚体が小さくてフッキングにいたらなかった。

f:id:cippillo:20110722080925j:plainf:id:cippillo:20210908152915j:plain
ボート桟橋からヘラブナ釣り方式による釣査と、カヤックによる釣査を行う筆者(2011年)


特筆すべきは、これまで水泳とカヤックでの目視調査では20尾ほどのへらぶなの群れをひとつ確認した程度だったが、SUPによって広範囲が見渡せるようになり、岸から20〜50mの沖目に数十尾単位のへらぶなの群れが数多く確認することができた。全体では二百尾ほどだろうか。小型はおらず、30〜40センチの良型ばかりである。鯉と混泳する姿も見られたが、想像していた以上に魚影が濃いことが分かった。ただ、岸から長竿でも届く範囲ではなく、やはりノッコミ期以外に釣果を上げることは難しいことに変わりはなさそうである。

f:id:cippillo:20130808101004j:plain
f:id:cippillo:20210908122537j:plain
カヤックとSUPによる魚影釣査の様子(2013年からカヤック、2015年にSUPを導入)


2016年はこれらへらぶなの魚群が3〜4つのグループに分かれて西岸側の岸寄りに居着いていたのが意外な変化であった。
2013年夏に70センチほど減水していたときは山荘対岸側のシャローエリアの面積が著しく狭くなり、好ポイントになっていたアシ原も根元が露出する状態であった。減水の影響か、水質は悪化しており、透明度が低くなっていた。水面の泡がなかなか消えないところを見ると、キャンプ場等の界面活性剤の影響も考えられる。

f:id:cippillo:20150802102129j:plain
やや沖目の表層を泳ぐヘラブナ魚群


2011年はブラックバスの魚影が濃く、特に朝夕のシャローではベイトフィッシュを捕食するライズが絶え間なくつづいたものだが、2013年夏にはシャローでのライズはほとんど見られなかった。2015年は活況で、2016年はフィーディングタイムのみライズが盛んになった。この時間をはずすとなかなか釣るのは難しそうだった。

2021年の魚影と釣況

岸では目視で大小のブラックバスを確認。釣れていたのは小型主体だが、岸には40クラスのスレバスの魚影も。
また沈木では居着きのニシキゴイ。ヨシエリアの近くでは岸から10mあたりに二つのヘラブナの魚群。いずれも以前より個体数は減少しており、自生サイクルが定着していない怖れがある。

f:id:cippillo:20210908092359j:plainf:id:cippillo:20210908092338j:plain
デカバス。かなりふてぶてしい。


 

ハイキング

蛭ヶ岳(ひるがたけ)の登山口と登山者用駐車場、トイレが近い。
外輪山だけのハイキングも手軽。

f:id:cippillo:20130808105436j:plain
蛾ヶ岳(ひるがたけ)の頂上から見た四尾連湖


 

四尾連湖の情景

湖上の霧(2016年)

早朝に湖上に立ちこめた霧が、夜明けとともにいっせいに吹き払われていった。

f:id:cippillo:20160827094732j:plain

出艇前(2011年)

f:id:cippillo:20210908152924j:plain

湖上の霧(2021年)

f:id:cippillo:20210908092423j:plain


 

池合宿

2011年初夏

この年は3回、四尾連湖に行った。

2011年夏(2回)

湖畔を掘れば獲れるミミズでブラックバスがよく釣れたので、よその子どもたちまで集まってきて、釣り道場状態に。
この子たちも今は社会人だろうか。

f:id:cippillo:20210908124152j:plain

f:id:cippillo:20210908124202j:plainf:id:cippillo:20110722080926j:plainf:id:cippillo:20210908152909j:plainf:id:cippillo:20210908152904j:plain
f:id:cippillo:20210908124207j:plainf:id:cippillo:20210908124157j:plain

2013年夏

減水で広い浜が出現した。

f:id:cippillo:20130808102813j:plain

f:id:cippillo:20130808103522j:plain
f:id:cippillo:20130808103755j:plain


2015年夏

SUPと空撮を実施。

f:id:cippillo:20150802103312j:plain

f:id:cippillo:20150802101238j:plainf:id:cippillo:20210908112829j:plain
f:id:cippillo:20150802103318j:plain
f:id:cippillo:20210908112815j:plain

2016年夏

対岸側の野営地に幕営。

f:id:cippillo:20160827094731j:plain

2021年夏

四尾連湖が人気になって五年ほど足が遠のいていたが、大雨とコロナ禍で人は少ないとのことだったので久々に。それでも昔に比べれば隔世の感。オシャレなカフェみたいなものまでできていてビックリ。
甥には身長も抜かれ、立ち船頭スタイルのカヤック操船も彼に託す。

f:id:cippillo:20210908092406j:plain

f:id:cippillo:20210908092507j:plainf:id:cippillo:20210908092413j:plainf:id:cippillo:20210908092345j:plain
kaizen.hatenablog.com


 

案内板

f:id:cippillo:20130808104440j:plain
f:id:cippillo:20210908092444j:plain


 

Googleマップ