水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

蓼ノ湖(栃木県日光)

たでのうみ。

まるでファンタジーの世界。時を忘れる透明感

国道を走っていても、その湖の存在に気づくことはまずないだろう。奥日光・湯元温泉の真上にあたる標高1,540m(GPS実測値)のくぼ地に、ひっそりと別天地のような山池がある。
水源を探して驚いた。湖岸の庭石のような岩の間からこんこんと水が湧き出している。岩のすきまはどこに通じているのだろう。神秘的な静寂を破ってクルマが通過する音が聞こえ、ああ、ここは国道近くだったんだと思いだす。





 

池の立地と地形

湯ノ平湿原〜切込湖・刈込湖ライン上の谷筋に立地

蓼ノ湖は、日光湯ノ湖の北900mほどの山中の標高1,540m(GPS実測値)のくぼ地にあり、湯ノ湖の主流入河川である湯川の本流との直接通水はないが、湯ノ湖の温泉水の流入口となっている湯ノ平湿原とは同じ谷筋に属する。
また蓼ノ湖の上流側には切込湖・刈込湖がある。この谷筋は涸沼との間に分水ポイントを確認している。
下の図の「ドドド」の右(下流側)に蓼ノ湖がある。その右は湯ノ平湿原と湯ノ湖。


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吐き出し(南西岸)

たいへん興味深い湖沼である。
平時は池の水の出口にあたる吐き出しからの表層水の流出は見られないが、超増水時にオーバーフローする可能性のある場所は地形的にはこの地点のみ。
地形的には堤状の岸と谷が湯ノ湖方面へと下っている。
下のパノラマ写真では左が湯ノ湖側への谷、右が蓼ノ湖の湖面。


流れ込み

幻想的な流れ込み(北東岸)

池の入口にあたる流れ込みも面白かった。もうアニメの世界みたい。



さらに岩の間から水が!(東岸)

蓼ノ湖の北東岸を埋める岩の間から水が湧出していた。なんともファンタジックな水源。



岩が積み重なった岸(南岸)

釣りをするなら足場がよさそうなのが南東岸。漁の道具なのか、ロープと杭の人工物が見える。



 

「湖上立入禁止」の意味するところは?

その意味するところの意外な意味

立て看板に記された「湖上立入禁止」の文字。ボート、フローター類を浮かべることを禁止するという意味かなと思ったら、併記された英語を読むと「氷上に入るな」ということであった。
なるほどネット上では「冬しか行けない秘境」として蓼ノ湖が紹介されている動画などもあり、雪山登山の人気コースのルート上にあり、氷が割れて転落する危険もあるようだ。

ホントに冬しか行けない秘湖は?

蓼ノ湖はとりたてて冬でなければ行けないこともないが、「冬にしか行けない秘湖」といって思い出すのは北海道・利尻島のオタトマリ沼の近くにあるあの沼。

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蓼ノ湖の空撮写真(2018年)

写真下に国道120号。その少し上に見えるのが蓼ノ湖(2018年撮影)


金精峠へとのびる国道120号。左下に湯元温泉、右下に蓼ノ湖が見える。


重畳たる山の奥にくぼみが見えるが、あれが切込湖だろうか。




 

蓼ノ湖へのアクセス

国道沿いにも蓼ノ湖登山口駐車場が設けられており、そこから徒歩20分。というのが公称の数値であるが、実際には駐車場の奥からの獣道で行けばすぐだったりする。ただ初めてだと迷いやすい。
蓼ノ湖で引き返さず奥に進めば、切込湖、刈込湖へと至る。

蓼ノ湖と国道沿いの駐車場(右下)。


正規のアプローチ入口はここ。見えている道は刈込湖方面への登山路。微妙に左に出ている踏み跡が蓼ノ湖へのアプローチ路であるが、少々、分かりにくいのでGPSの軌跡を参考に。


正規ルートとは別に、クルマのすぐ後ろの草むらからの獣道を使えば、蓼ノ湖まですぐだった。



 

動植物

生息魚類

かつては釣りをする人の姿もよく見られたという報告もある。トラウト類狙いだろうか。
訪れた際に直接確認できたのはモツゴの群泳のみ。

植物



 

同名の湖沼

同名の湖沼としては、長野県諏訪に蓼ノ海(蓼の海)がある。ただ、読みと語意は同じだが「うみ」の字が異なる。

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マップ

奥日光の池さんぽマップ

この鳥瞰図は拙著『日本全国 池さんぽ』の表紙にも使用。

奥日光の水辺 ver3.1


Googleマップ

マークした場所は蓼ノ湖登山口駐車場。