水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

長坂牛池(山梨県北杜)

長坂湖。

「長坂湖」という愛称をもつレトロな町に寄り添う池

神さまが乗って来たという白い牛にまつわる伝説のある牛池。
長坂の町のメインストリートに寄り添うような立地で、立ち並ぶ家々は池の景観要素になっている。
一見、公園池のように見えるが、よく見ると堰体や洪水吐、取水設備を持つ農業用ため池であることが分かる。
岸まわりは遊歩道や親水デッキ、駐車場など公園的に整備されているものの、公園としての名称は見あたらず「長坂湖」という愛称が事実上の公園名として使われている。


 

牛にまつわる池伝説

池伝説で全国的にもっとも登場頻度が高い池ヌシは大蛇(龍)であるが、二位はじつは牛。池のヌシが牛というのは現代人の感覚からはちょっとピンと来ないけど、北杜市から南アルプス市にかけては牛にまつわる伝説を持つ池が特に集まっている地域で、拙著『日本全国 池さんぽ』でも採り上げさせてもらった。


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池の設備

堰体と洪水吐

ため池としての基本装備が見られるが、現在では公園池としての役割が強い。

洪水吐と取水設備まわり


堰体。天端はクルマも通行できる。


遊歩道

池は親水護岸、水上デッキ、遊歩道でほぼ全周にわたって釣り歩きしやすかったが、釣り禁止後の2022年の再訪時には遊歩道は草ぼうぼうに。
野釣り人は池を大切に守っていこうという意識が高い人も多いだけに、マナーが悪い一部の釣り人のためにホワイトナイトも排除する「釣り禁止」措置が池の将来にとって本当に良いのか、地域には今一度、議論と再考をお願いしたい。


北岸側の遊歩道。

水上デッキ

充実の水上デッキ。


 

ブラックバスの魚影が濃かったが釣り禁止に

周辺の野池が釣り禁止が多いなか、市街地にあるこの好環境な池で釣りができることは奇跡に近いものがあったが、2021年から長坂牛池もついに釣り禁止になってしまった。

2018年8月、水面に落ちた蛾をじっと注視するブラックバスの幼魚群。蛾が水面を移動するにつれ群れも追っていくが、ついには誰も手を出さなかった。動くものは何でも追うサイズが群れていても警戒心を解かないだけに、そうとうなハイプレッシャーがうかがえる。池を一周したが大量の小バスを確認したものの親魚の姿は見えず。


ブラックバスの幼魚だろうか(2022年9月撮影)



 

駐車場

堰体わきにある。道路からは反対側にあたり池を半周しなければならないのと台数キャパが小さい。一角に慰霊碑が立つ。


 

謎の慰霊碑

平成に建立された慰霊碑だが、何を慰霊しているのかは記されていなかった。牛?



 

周辺には「湖」名をもつ溜め池が四つ

長坂湖こと牛池の近辺には、どう見ても野池なのに「湖」の愛称をつけたものがいくつかある。「みどり湖」「白井沢湖」「米山湖」。
地域の観光振興に野池を積極的に活用しようという動きもあったようだが、うまくいかなかったのか、釣り禁止のみどり湖などは廃墟化しつつある。牛池は釣り禁止から免れているため、入れ替わり立ち替わり釣り人が訪れていたが、この池もついに2021年に釣り禁止となってしまった。

2022年9月撮影


 

Googleマップ

マークした場所が駐車場3台。