すがりおおいけ。
本州最後の「半島秘湖」?!
伊勢志摩のリアス式海岸の末端部に位置する須賀利大池と、その西岸に腰巾着のような須賀利小池の二つの海跡湖は、縄文海進による成立以来、集水域から湖岸に至るほとんどが古来の形態を保っている点で希少な存在。
伊勢志摩リアスには似た形態の海跡湖が点在するものの、周囲長1km超クラスで明瞭なアクセスルートがなく開発予定もない点では、本州ではわずかになった半島秘湖といえそうに思う。
ほぼ人の手が入っていないため、湖底には過去の大津波などの地層履歴が残されており学者にも注目されている。
「須賀利大池及び小池」として国の天然記念物にも指定。
須賀利大池の形態
三重県で最大の海跡湖。でも、ふつうの海跡湖じゃない
海跡湖は通常、海側は砂嘴をはさんでビーチになっていることが多いが、須賀利大池は南海岸側が山、東海岸側が岩の断崖になっており、西海岸側のみ須賀利小池を経て砂浜となっており、これらが天然の防壁となって海上から直接、その存在を感じることはできないだろう。
海までの距離は一番狭い断崖側で15mほど、小池側で100mほどだが、海水の侵入はないという。増水したらこの狭隘な岩壁から海滝が現れそうな魅力的な立地。
海水の侵入がなく、水の色が
海水の影響を受けていないということで、淡水性の藻類が繁茂しているのか、池の水の色がすごい。
須賀利小池
小池の方は大池と海の通水部のような立地にある。
山と大池を背にビーチに対して裾を開いたかっこうで、高潮などの際には海水の侵入もありそうな立地。大池とは明らかに水の色が異なる。
湖岸に日本最大級のハマナツメの群落
湖岸には日本最大級のハマナツメの群落のほか、貴重な植物が自生している。
須賀利大池へのアクセス
渓流沿いの林道
須賀利大池の方へとのびる林道があるが。クルマ止めあり。この林道は須賀利集落へと流れだす渓流沿いにのびる。徒歩で進むが、途中で崩落によって途切れていた。
この渓流は須賀利大池から流れ出しているわけではない。
正規アプローチ路があった
須賀利大池には須賀利小池経由での正規アプローチルートと、それを案内する道標があるとのこと。
入口に駐車スペースはないので、バスか、漁港にクルマを止めてのアタックになろうか。Googleマップには、この道の入口の正確な位置(誤差数メートル以内)を示しておいた。橋の左岸側たもとに鉄の階段がある。
登坂高度は200mほどであるが、往復7kmで4時間ほどかかる。
カヤックでのアクセス
西岸はビーチになっているため海岸側からカヤックなどでの上陸も有効と思われる。
周辺地形
なかば島のような半島になっている。道のどんづまりには、まるで隠れ里のような須賀利漁港。
文化庁の「文化遺産オンライン」での解説(抜粋)
以下、文化庁の「文化遺産オンライン」より。
須賀利大池及び小池は,三重県尾鷲市須賀利町の熊野灘(くまのなだ)に面した半島部にある海跡湖(かいせきこ)である。
須賀利大池は,面積約5.8haの細長い形をした池である。この池は,今から7~1万年前の最終氷期に海面が下がっていく過程で形成された谷が,その後の海面上昇の過程で,砂礫(されき)によって次第に閉ざされていったものと考えられている。西側と東側の開口部や東南端に僅かに外洋に開いた部分があるが,通常海水の浸入はなく,湖底には,過去の大津波による堆積物が確認されている。
須賀利小池は,須賀利大池の西側に位置する,面積約0.23haの小さな海跡湖であり,大池と同時期に形成されたと考えられている。
須賀利大池及び小池には,多くの維管束(いかんそく)植物が確認されている。大池湖畔には日本最大級のハマナツメの群落が発達するほか,極めて稀少なアズマツメクサをはじめ,暖地性常緑広葉樹類のバクチノキが散在する。外洋に面した断崖や礫浜(れきはま)には,アゼトウナやキノクニシオギクなどの貴重な草本類(そうほんるい)が生育する。テツホシダ,ツクシナルコなどの希少種やハマホラシノブなど植物分布地理上,貴重な植物が生育する。小池は小さな海跡湖であるが,豊かな水草相を有している。
須賀利大池及び小池は,全国で人工的に改変された海跡湖が多い中で,集水域から海岸線そして湖底の津波堆積物までが良好に保存されている極めて貴重な例である。また,須賀利大池は,全国有数規模のハマナツメ群落もみられる重要な地域となっている。
(文化庁「文化遺産オンライン」より抜粋)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/246290
Googleマップ
マークした場所は、須賀利大池へのアプローチ路入口の正確な位置。