苫小牧郊外、厚真町の海岸近くにある天然沼沢群のひとつ。
気になる池が多いのだが、水ぎわまで近づけないものが多い。三宅沼は東岸側に未舗装路が通っているが、低木に阻まれて沼の姿が思うように見えない。
この沼については半世紀以上前の魚養殖業界の研究レポートが見つかった。その中で描写されていた三宅沼の植生は今とあまり変わっていないようだ。都市化する苫小牧からそれほど離れていないのに、半世紀以上も姿を変えずに現在に至っているのはすごい。
以下、「勇払郡厚真村池沼の湖沼条件」(大東信一・黒萩 尚・長内 稔)と題されたレポートの一部を抜粋。太字は水辺遍路が施した。
太字のうち、「腐植湖」とは腐植栄養湖のことで、環境省が5年に一度行う「緑の国勢調査」(自然環境保全基礎調査)における6分類の湖沼型のひとつ。
高緯度地方や標高の高い泥炭地に見られ、カモミールティーやウーロン茶のような水の色をしている。こういった池は非調和型湖沼といって、魚にとっては棲みにくい環境。
レポートでは三宅沼は比較的、調和型に近い特徴があると報告されている。
水産利用に関する考察 調査の結果を要約すると厚真村のこれ
らの池沼は全て火山灰地帯に渉透水によって泌養されたもので火山灰地帯特有の珪酸分の比較的多い水を湛えているが同時に湖盆形態や周囲の状況によって差異 はあるが外来性の腐植質の影響も受け大部分の池沼は腐植湖的な様相を呈してい る。従ってプランクトンの現存も比較的低くプランクトン生産量とは必ずしも比例するものではないが, これらの池沼の漁業生産性は低いと考えられそして特に外部からの影響を強く受けやすい小池沼においてははなはだしいと考えられる。 したがってこれら調査池沼の中で漁業生産に利用し得る良い条件を備えていると考えられるのは面積が比較的大きいPHの中性またはそれに近い溶存酸素量も比較的豊富な過マンガン酸カリ消費量の比較的低い長沼、大沼および三宅沼の三池沼であろうと考えられ,プランクトン出現状況でも大体それが裏書きされる。
(「魚と卵」第95号(第13巻第4号)1962(昭和37)年「勇払郡厚真村池沼の湖沼条件」大東信一・黒萩 尚・長内 稔)