水辺遍路

訪れた全国1万1,100の池やダムを独自の視点で紹介

皿小屋沼(秋田県湯沢)

さらこやぬま。佐太子沼。

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皿小屋沼の奥、写真左手の山斜面の上には細沼と貝沼がある。

娘の悲話が伝わる、溜め池の構造をもつ沼。

主人がたいせつにしている皿を割ってしまい、沼で死んだ女中の娘にまつわる悲話が残る。皿小屋沼の名前の由来であるが、この家は豪農だったとのことだから「皿屋敷沼」とでも呼ぶ方がよさそうだが、なぜ小屋なのか不思議である。
池に会うには林道「皿小屋線」に入っていかねばならないことから、雪などで二度阻まれてきたが、三度目の正直で会うことができた。
一帯は30万年前の火山活動後の地すべりによって生まれた天然湖である皆瀬湖沼群がある。
皿小屋沼はこれら天然湖沼群と皆瀬ダムにはさまれた緩斜面上に立地するが、堰体や洪水吐といった構造もみとめられ、天然湖沼を改造した溜め池のようだ。堰体を見おろす斜面には小さなお社もあるが、ヌシになった女中を祀ったものだろうか。夕方だったせいかもしれないが、あまり長居したくなる雰囲気ではなかった。沼の上を通る高圧線がおかしな磁場を作っているのかもしれないなどと妄想しながら、けっこう大きな単独の野鯉と、三尾で群れるブラックバスの魚影を見たが、竿も出さず写真だけ撮って引き返した。

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堰体と洪水吐。


 

アプローチと周辺の水辺。

国道から狭い未舗装林道に入る。「林道皿小屋線」の標柱とともに、沼にまつわる伝説が記された案内板も立っているので目印になるだろう。
この林道に入って180mのところ右側に鳥居と枝道がある。枝道にはクルマ止めがあり徒歩で130mほど進むと沼の堰体側に出る。駐車スペースはない。
林道入口の案内板には以下のように記されている。

民話の里 この先500m

佐太子沼(皿小屋沼)

昔、この地に三浦徳兵衛という豪農がいた。その家に佐太子という女中がおり美しくやさしい娘であった。主人の徳兵衛が懸想したが、娘はなかなか思うとうりにならなかった。ある時、佐太子があやまって家宝の皿を割ってしまった。主人は怒って、その罰として裏の沼を十回泳ぎ廻るように命じた。佐太子は主人の命とあれば致しかたなく、沼に入り一回二回と泳ぎまわったが、かよわい娘のこと、七回半まわった時は、精根つきはてて、ついに水中深く沈んでしまった。
そして、そのまま沼の主となってしまった。
その後、村第一の豪農と称せられた徳兵衛は家産も傾いて、いつのまにか家も絶えてしまった。
村人は、佐太子の恨みのためとうわさし合ったという。今もその沼があり、名を佐太子沼、または皿小屋沼ともよんでいる。

 
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貝沼周辺ノ図。


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国道から皿小屋沼へアプローチする林道の入口。


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ブラックバスと鯉の魚影。


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池ばたのお社。