きょうこち。
鹿苑寺金閣を映し出す鏡湖池は、今や世界的なフォトジェニック池。金閣のキンキラキンな俗臭を洗い落とすこの池がなければ、これほどの観光地になれただろうか。
やはり異様な景観である。作庭感をほどほどに抑えた落ち着きのある近景に、人工林ではあるが端然ではない杉木立の中景、そしてそっけなく自然な山なみの遠景という三段仕込みの中央に、まるで何かの間違いのように、のっぺりと非現実味を厚塗りしたような金色の楼閣。魔のような金色は映り込んだ水面にも異形の領域を広げ、これを俗と見る度胸があるかと、そんなふうに嘲笑われているかのような気にもなる。この感覚はこの池でしか味わえない。
いや、ひとつだけ似ているものが頭に浮かんだ。フジヤマだ。
昔から信仰の対象として多くの人をぬかずかせてきつつも、俗物の権化として山好きや絵描きから敬遠される側面ももつ。清濁あっても、この山を一目見ないことに外国人観光客は日本を去れないだろう。
山の間から、新幹線の鉄橋から、いきなり純白の無垢をまとって白銀に立ち現れる富士を目にした時、理屈抜きに圧倒される。修飾する言葉や描写する画法を奪い取る無比の存在。そういう意味では鏡湖池を毒する金閣も、やはりたぐいまれな魔力をそなえた池であることを認めないわけにはいかない。
雪化粧すると水墨画のような林泉に金色の楼閣が浮かび上がるそうだ。一生に一度は見てみたいと思い真冬の京都を歩いてまわったが、暖冬で夢かなわず。
曇り空で雪もなく、の金閣の写真しか撮れなかったので、帰還後ペイントソフトで加筆して雪景色に。この方法はフォトバッシュというそうだが、初めてということもあってこの1枚に15時間ぐらいかかった。はっきり言って写真で残っているのは金閣のシルエットと構図ぐらい。これなら最初から手描きした方が早そうだが、もう少し研究してみようと思う。
金閣の足もとに流れ込みがある。流れ込みの先は小さな池を経て、裏山の安民沢に通ずる。
2018年10月には、鏡湖池の南側に造営中の幻の池跡が発見され話題となった。
マークした場所は有料駐車場。