くらたにいけ。
日本一の大天狗。その本拠地は昭和になっても伝説が。
讃岐平野に浮かぶぽっこり山の奇景が見わたせる白峯山。
山腹の見晴らしのいい一角に大正時代に造られた溜め池が鞍谷池である。堤高15mのアースダムで「ダム便覧」にも記載された公認のハイダム。
池の水源となるインレット側に自衛隊の射撃場などの訓練フィールドができたことにより、貯水機能に問題が発生し、国家の防衛予算で改修工事が行われたという、ちょっと変わった経緯をもつようだ。
訪れた際は減水していたが、岸寄りの底は比較的なだらかで、礫と一抱えほどの岩が混在していた。これは満水の際にはブラックバスなどの好むポイントになりそう。
岸に立つと池はなだらかな丘陵地形の中にあるように見えるが、じつは白峯山・五色台の登山道路をクルマでかなり上った高所にある。
堰体からは瀬戸内海と瀬戸大橋も見える。
それにしてもここからの眺めは、天狗伝説が今なお信じられている土地だけあって、いつまでも見飽きない不思議な景観。
鞍谷池という名もどことなく天狗を連想させるものがあるが、そんなレベルの話ではなかった。
この池を包む白峯山には、天狗の中の天狗、自らの舌を食いちぎった血で誓いの呪詛を記して大天狗となった崇徳天皇のお墓である白峯陵があったのだ。いわば天狗伝説の総本山に立っていた。
崇徳院の天狗伝説では、江戸時代に著された上田秋成の「雨月物語」が心に残っている。「雨月物語」は今でいうホラー短編集といったところだが、その一編「白峯(しらみね)」の舞台こそこの地である。旅の途上にあった高僧・西行法師と、魔性となって人界に災いをもたらす崇徳院との対決。
調伏といった対決姿勢ではなく、もとは高貴なお人だった崇徳院を和歌の力で諭す構成がカッコいい。
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さて、大天狗の災いはなんと昭和になっても二度、引き起こされている。
昭和三年,昭和天皇即位を祝う村民総出の祝賀会当日に、厳戒態勢にもかかわらず、式典開始直後に大火事が発生。
さらに昭和39年の崇徳院800年祭では高松宮殿下も参列予定で現地入りしていたが、式典当日午前零時に地元小学校が火事に。鎮火直前には白峯山が突如、大きく鳴動したのを多くの人が聞いている。
この「天狗倒し」と呼ばれる地鳴りの話は、坂出市のホームページに記載されていたものである。