こうせだむ。
楽しては得られぬ「ダム行者」の境地。
紀伊半島の奥深く、季節になると今なお白装束の行者さんの姿であふれる奈良県天川村。
天川といえば行者の宿としてひっそりと営業をつづけてきた洞川温泉が近年、若い人や外国人といった行者とは縁のない向きに人気が高まっている。
そんな天川村に位置する難読の川迫(こうせ)ダムだが、古来からの修行の場であった山々に抱かれた戦前の電力ダムということもあって、クルマで行けるとはいえ道のりは楽ではない。
天川村では唯一という信号機のある川合交差点を過ぎて国道をまっすぐ進む。国道といってもここからは行者還林道との併用区間。紅葉と巨岩が目を奪うみたらい渓谷を過ぎてからが国道ならぬ酷道の本領発揮。離合困難なこの狭隘路で四苦八苦を強いられる。
そして苦労するわりには、ダムサイトにわずかな駐車スペースがあるだけで、木々に視界を遮られ、堰体やダム湖は垣間見るのがやっと。
すべてが報われるわけではない。しかしダム湖の水とは思えぬ清涼な水に、何かが溶けだし、洗われる・・なんてことがあるかは分からないが、ダムめぐりを趣味としている人なら、ちょっとしたダム行者の気分を味わえるだろう。
ダム湖を通りすぎてインレット側にも、わずかだが駐車場とトイレがある。
マークした場所は駐車スペース。インレット側に駐車場・トイレあり。