かりこみいけ。
千尾もの大蛇を刈り込んだ伝説の山池
国道158から九頭竜川の支流、打波川に付き従うように県道・上小池線へと折れ、ひたすら川沿いに一本道を白山のふところ深くへと分け入っていく。対向車もなく20km近くも走っただろうか。その名も、小池公園と呼ばれる登山拠点に着いた。小池公園とはいうが、それらしい池は見あたらない。県道名にもなっているのに不思議だ。登山客だろうか、ロッジの前に数台のクルマが停まっている。
時間は午後３時。２時をまわると登山路での熊との遭遇確率が高くなるというので、少し焦っていた。小池公園からもう少しクルマを進めたところにある上小池駐車場というトイレ付きの舗装駐車場で車道は終点。標高はすでに930m。
ここから急ぎ山支度をととのえ、伝説の刈込池への山道へいざ。
少し進むと打波川をまたぐ橋があり、小池公園からの道と合流する。
刈込池へのルートは2.4km、80分の岩場コースと、1.3km、60分の石段コースの二通り。健脚向けという石段コースは橋を渡るとすぐに急登がはじまるが、足もとは石段が組まれていて心拍数が上がる以外に難儀はない。ところどころにある道標には刈込池までの距離と段数が示されている。ちなみに起点の橋から池までは686段とのこと。
序盤でスニーカーに手ぶらの二人組みの男性を追い抜いた。熊除けのつもりで、大声で猛犬のマネをして吠えまくっていたので、二人は完全にフリーズしていた。よもやこの時間に人がいると思わなかったので、申し訳ない。
驚いたことに二人はアジア系だったが外国人のようだった。しかも運動不足気味なのか、山を登る体形には見えず、かなり息を切らしていた。引き返した方がいいですよと伝えようか迷ったが、生まれてこのかた日本を出たことがない私には外国の人の情熱も底力も推しはかれないので、もし復路で呻吟しているようだったら声かけすればよかろう。といって、そもそも日本語以外、話せないけれど。
急登の石段が終わると、比較的なだらかな茂みの中を進む。ところどころに案内板があって飽きさせない。
やがて道はゆるやかに下りはじめた。刈込池は近い。手持ちのGPSで標高は1,080m。
刈込池は周囲400m、水深4.5m。
泰澄大師というお坊さんが白山に棲む三千尾（！！）の大蛇のうち、千尾をこの池に「刈り込んだ」（閉じ込めた）そうだ。なんともすごい話である。
打波川は刈込池のある峰をまわりこむように迂回して白山をさらに深く刻んでおり、池が直接の水源になっているわけではない。
池には流出河川はなく、完全に独立している。なるほど千尾もの大蛇を閉じ込めるにあたっては、流出河川があってはいけない。ブラックバスと同じで、ぞろぞろと川伝いに出てきてしまう。
さて残る二千尾はというと・・千尾は白山山頂湖沼群の、その名も千蛇ヶ池に、さらに千尾は砂防新道沿いにある蛇塚に封じ込めたそうだ。
この刈込池、目立った流入河川や沢も見あたらないが、不思議なことに水位は一定ラインを保っているという。
紅葉は10月中旬から11月上旬が見ごろ。アプローチ路は冬期閉鎖あり。
マークした場所は上小池駐車場（トイレあり）
