水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

与蔵沼(山形県鮭川)

よぞうぬま。

ブナ林に囲まれた与蔵沼。片道2時間の登山で会える

底なしの伝説をもつ、ひっそりした山池

田沢川ダムに行った際に、ダム案内板にあった魅力的なマップで、この沼の存在を知った。酒田市と鮭川村の境界上にあるが、観光要素としてアピールしているのは鮭川村側。
ブナの原生林をまとった与蔵山の山肩に立地する大蛇伝説のある山池で、会いに行くためには羽根沢か大芦沢の二つの登山口から往路2時間ほどの山歩きが必要。
羽根沢登山口の途中には味わいのある羽根沢温泉も。いずれの登山口も、アクセス路起点にトイレと案内板がある。

田沢川ダムの案内板の部分拡大。左の方に与蔵沼が記されている。


 

与蔵沼の概要

立地

与蔵山(よぞうさん・標高702m)の山肩の標高620mのコル状のくぼ地に立地。周囲長200mクラスで岸斜面はそれほど急峻ではない。一帯は山裾にかけて与蔵の森が広がる。

大蛇伝説

与蔵という若者が大蛇に変化して沼を作ったという池伝説がある。
以下、鮭川村のオフィシャルサイトより抜粋。

大芦沢・羽根沢と飽海郡との境に与蔵峠というところがある。標高685メートルで、昔は庄内越えの要路であった。峠の頂上には直径200メートルほどの沼がある。深さは底知れず、あるとき村の若者が筏をつくって沼の真ん中にいき、深さを計ろうとして縄一把におもりをつけて下ろしたが、底にとどかなかったという。この沼には主の大蛇が棲んでいるといわれているが、大蛇にかかわる物語が伝えられている。
昔、この峠で炭焼きをしていた与蔵という若者がいた。ある秋の日のこと、与蔵はかまに入れる薪背負いをしていた。汗を流したせいか、喉がからからにかわいたので、筧(木や竹でつくったといで、水を引くしかけ)から流れてくる水に口をつけてごくごく飲んだ。ふと見ると、筧に小さな魚が二尾流れてきていた。与蔵は喜んでその魚を捕らえ、焼いて昼飯のおかずにした。ところがどうしたことか喉がかわいてきはじめた。筧の水を続けざま飲んだが、それでもたまらない。与蔵は大急ぎで沢に下りていき、沢水に口をつけて飲んだ。
その日も暮れ、夜中になっても与蔵が帰らないので母親が心配して、村人たちと迎えに峠に上った。炭小屋のところまでくると、そこには満々と水をたたえた大きな沼になっていた。みんなびっくり仰天したが、それよりも与蔵はどうしたものかと、みんなで探しまわったが、みつからない。
蛇画像母親は気がふれたようになって、『与蔵やーい、与蔵やーい』と叫んだ。すると、今まで静かに月光に輝いていた沼の水面が急にざわめいて、大きな渦がもり上がったと思うと、そのなかから、にゅと鎌首をもちあげた1匹の白い大蛇が、真っ赤な口を開けて『おーい』と返事をした。
与蔵はあまりに喉がかわいたので、谷をせきとめて沼をつくり、そこにはいり水を飲んでいるうちに、大蛇の姿に変わってしまったのである。大蛇は1回姿を現しただけで、いくらよんでも二度と現れなかった。母親は泣く泣く村に帰ってきた。
そこからこの沼を与蔵沼、峠を与蔵峠と呼ぶようになったという。それからのち、この峠を通る人はときどき白い大蛇が沼で遊んでいるのをみかけるという。
(鮭川村オフィシャルサイト)
www.vill.sakegawa.yamagata.jp

池伝説の動画


www.youtube.com


 

登山口とアクセス

羽根沢登山口

林道起点に羽根沢温泉と観光駐車場、公衆トイレ、案内板がある。登山口から沼までいちばんアクセスしやすいルートであるが、2022年7月末時点では登山口へのアクセス路が通行止めとなっていた。



観光駐車場

大芦沢登山口

与蔵の森に設けられたルートで、「まぼろしの滝群」を経由して沼へと通じている。ところどころの滝が目を楽しませてくれるが、歩く距離がやや長いが、登山道自体はよく整備されている。
途中の標高530m地点で、モリアオガエルの沼を横目に通る。
林道起点に観光駐車場、公衆トイレ、案内板がある。




 

田沢川ダム(酒田)側からのアクセス

2021年、酒田側から庄内越えの峠にある与蔵沼をめざすも、通行止めで進めず。空撮で地形の予備調査も天候不良で不調。




 

地形空撮

酒田側から与蔵峠方面をのぞむ。


 

与蔵沼の生息魚類と動植物

魚影は濃い

モツゴだろうか。小型の日本産淡水魚の魚影が濃く、いくつかの群れが見られた。


蛇ほどもある巨大ナメクジ

何をしているんだろう。とぐろを巻いて泡を吹いている。同じような状態のものを数尾、登山道で見かけた。
調べてみるとヤマナメクジという在来種で、トグロを巻いているように見えるのは交尾をしているのだとか。

キノコと植物

大望遠スモールワールド劇場。




 

与蔵沼といっしょに訪れたいスポット

まぼろしの滝群

今は幻でも何でもないが、昔は噂のみで存在が確かめられるまでは幻とされたという話。ハイキング路で手軽な滝めぐりができる。



曲川の大杉

トトロのような外見を持つ木は、山形県内でももう一ヶ所あるが、こちらは単にトトロに似ているというだけでなく、樹齢千年の御神木。枝ぶりのオーラがすごい。
展望スポットに駐車場、トイレ、自販機あり。


モリアオガエルの沼

標高530m地点。与蔵沼とは分水嶺をはさんで背を向けており流れ出しの方向は逆となる。


沼の奥側はフラットな地形


 

マップ

池さんぽマップ

Googleマップ

マークした場所が、与蔵沼。