水辺遍路

訪れた全国1万1,450の池やダムを独自の視点で紹介

あしくらの池(長野県諏訪)

池のくるみ踊場湿原。

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近づくには遊歩道で20分ほど歩く必要があるが、車道からも上から見おろすことができる。

あしくらの池のある踊場湿原(通称・池のくるみ)国の天然記念物に指定された標高1,550mに広がる泥炭質の高層湿原。霧ヶ峰の三大湿原のひとつ。1周70分の遊歩コースが設定されており、ハイカー用の未舗装駐車スペースのほか、ヒュッテも立つ。
観光バスも多い霧ヶ峰のメインルートからははずれているため、訪れる人は多くはなく、なだらかなくぼ地をめぐる静かな散策を楽しめる。
それにしても「あしくら」とは何だろう。富山県の立山に芦峅寺(あしくらでら)というお寺があり、Amazonでは「芦峅(あしくら)カンジキ」なる民具のような履き物が販売されていた。
芦峅カンジキは立山カンジキとも呼ばれ、芦峅寺に千年にわたって伝わってきた雪上を歩くための履き物で、かつて南極越冬隊にも使われたこともあるという。雪山登山に一定の愛好者はいたようだが、最後の職人が2018年に引退した。
話が脇道にそれたが「峅(くら)」という漢字は谷間を意味するので、この池がある立地には符号する。芦が茂る谷の池といった意味か。
この池の名物は、一見すると少しぎょっとする谷地坊主(やちぼうず)。北海道の釧路湿原や山梨の乙女高原、栃木の戦場ヶ原でも見られる。植物のスゲ類が長い時間をかけてコキアのような丸い形状になったものである。

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谷地坊主(やちぼうず)。スゲ属の植物が寒冷な湿地で球状の株をつくった状態をいう。

谷地坊主の浮かぶ池のほとりに立つには遊歩道で20分ほど歩く必要があるが、池を見おろすだけであれば西側の車道からも見おろすことができる。ここからは茅野の町まで一望。まわりに小さな池塘も見えるが灌木も生えはじめているのが気になった。
今はかろうじてゴルフ場とみまごう草地が広がっているが、人の手が加わらなければやがて池と湿原の寿命を迎え、林から森へと姿を変えていくのかもしれない。

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駐車場と案内板。

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マークした場所はハイカー用の駐車スペース(未舗装)。