水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

安城大池(愛知県安城)

大池公園。大池調整池。
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さまざまな機能で活躍する都市型調整池。

現在の安城を地図で俯瞰したとき、まず目に飛び込んでくる池はデンパークの池とこの安城大池(大池調整池)である。デンマークコンセプトのデンパークは、安城市民なら誰もが利用する定番施設だが、どうしてデンマークなのかというと知っている人は意外に少ない。
都市化が進む安城市もかつては日本のデンマークに例えられる農業王国だった。その農業用水を支えたのが明治時代に築造され、88kmの幹線水路を軸とする明治用水。土地の名ではなく時代の名が冠せられているあたりに、近代用水のエポックメーカーであることがうかがえる。

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親水機能もばっちり。釣り人にもうれしい工夫された護岸。ただしルアー釣り、投げ釣りは禁止。

安城大池は明治用水との通水口が設けられているだけでなく、池畔には明治用水記念会館もある。住宅に囲まれて安城大池が周囲の土地より4mほど低く水面を横たえている。
池とつらなる北側の小丘陵には、公園の広場や遊具、ゲートボール場をはさんで駐車場もある。親水公園として整備された遊歩道は池をぐるりと歩いて一周できる。
南岸は住宅地と接し、石組みの垂直護岸。歩道は池の上にオーバーハングしている。
西岸は斜めに大石を組んだ護岸で北にいくほど水面が近くなってくる。北岸はさらに水面が近くなり、東岸側では遊歩道と水面はほぼ同じ高さにまで低くなる設計だ。池とのあいだに柵は設けられているものの、テラス状にスペースが設けられているおかげで、地元の釣り人にとっては、よい足場になっている。
眺めていると、釣り人の竿が大きく弧を描いた。なかなか引き寄せられない。やっとタモに入ったのは金色に輝く立派なマブナ。ヒレも大きくいかにもタフそうだ。
訊いてみると、釣れるのはマブナばかりとのこと。それでも引きを楽しみに、足繁く通っているのだという。ヘラブナ偏重の窮屈さとは無縁のようだ。
都市部の調整池でありながら釣り公認というのは、他地域ではなかなかお目にかかれない。公園化されていると、釣り人以外とのトラブルから釣り禁止になるケースも多い。名古屋周辺の公園池の多くで、釣りが公認されているのはすごいことだと思う。ルールを守って末永く続いてほしい。この大池もルアー釣りや投げ釣り、夜釣りは禁止されている。

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釣り師とマブナ。

名古屋を中心とした都市部は、時代に合わせた池の利用法がうまい。都市計画に水辺を生かす哲学があったのだろう。
当初は農業用水を公平配分するための明治用水の調整池だったが、都市化に合わせ、洪水調節用の雨水幹線水路の調整池の役割も担うようになった。西岸側に巨大な四角の放水トンネルが口を開けている。大雨のときはここから大量の水が吐き出され、洪水から町を守っている。
階段状護岸も設けられているが、これは最近、愛知を中心に設置が増えている災害時の生活・防災用水のくみ上げ用だろうか。
公園へのアプローチ路は住宅地内の生活道。駐車場はあるが台数は少ない。トイレあり。

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駐車場。


マークした場所は駐車場。