水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

大谷地堤(新潟県五泉)

五泉の野池群のひとつ。
新潟平野の湖沼や池には、「〜潟」をはじめ「〜湖」、「〜池」という名のものが多いけれど、少数ながら見附市の太平堤を筆頭に「〜堤」という名の溜め池もある。「堤」を使うのは山形や秋田でよく見られる池文化であるが、熊本県の一部地域でも見られる。形態的、外見的な違いは見だしにくいので、溜め池造りの技術者集団の出身地の池文化によるものだろうか。
ここ大谷地堤も江戸時代築造の溜め池なので、名付けは古い。
それにしても新潟の湖沼はおもしろい。数だけで見ると西日本に叶わないが、新潟は県名にも池を表す「潟」が入っているだけあって、いろんなタイプの池や湖沼が集まる池の見本市のよう。
また、県をあげてにいがた農業水利百選を選定するなど、池目線で見るとじつに奥深い。
大谷地堤はこの百選にも選ばれており、地域の宝である池を身近に感じてもらいたいという百選の理念のもと、堰体に紫陽花を植栽、カヌー教室などでの湖面利用、農業用水だけでなく消防用水にも活用など開かれた側面もある一方、堤直下に車止めゲート、立入禁止看板、釣り禁止看板があって、池下の豊かな田園風景の景観を損ねていてもったいない。
この美しい池を愛でようにも、池を眺める行為そのものが不法侵入にあたらないか気にしながらというのも何だかなあと思っていると、折りしも青森県では中学生の水難事故をきっかけに柵のない溜め池が多いことを問題化し、今後、柵や看板を設置していくというような報道がなされていた。
池を身近に感じ大切に思ってほしいという思いは本当に違いないが、一方で柵と法で人を遠ざけるを得ない社会情勢・・日本中の多くの池が抱えている矛盾と課題だろう。


水源の山からは、まるで白龍が天に昇るかのような水煙が


マークした場所に車止めゲート。