にしごうだむ。
左岸側を自衛隊演習場、右岸を牧場にはさまれ、ほとんどひとけのない立地にあるものの、アースダムとして32.5mの堤高はかなり立派なものである。
32mのアースダムといえば、わが国で300年にわたって世界一として君臨した奈良の大門池を思い浮かべずにはいられない。
国内のダムで半数弱を占めるアースダム1310基のうち、このように30m越えの堰体をもつのは、8パーセントしかない。
アースダム日本一は九州の清願寺ダム(60.5m)。清願寺ダムのページに二位から五位も含めて実踏掲載しているのでアースダム好きの方はどうぞ。
ダムの外側は草で覆われているが、これは土の堰体を雨の浸食から守るという立派な役割を担っている。ただ単に草ぼうぼうというわけではないのだ。
また、内側は石積みなので、最初はロックフィルダムの外側に草が生えてしまっただけかと思っていた。
ロックフィルダムでも外側に芝生を植える事例もあり、ではロックとアース、どこが違うのかというと、水を止めるコアとなる粘土層を表と裏からサンドイッチにする部材に、土を使うか石を使うかの根本の違いがある。
消波用に石やコンクリートで、表面をコーティングするかどうかは、上っ面の問題であって、見た目はともかくアースとしての本義は揺るがないということである。
それにしても、のんびり穏やかな水辺である。
江戸時代から雨乞いや水喧嘩がたえなかった地域の悲願が、第二次世界大戦をはさんで戦後になってやっと結実した。水面で青く弾ける陽光はそんなそぶりは少しも見せない。あっけらかんとした空気がかえって胸に迫る。
冬期は水を抜くという話だが、確かに航空写真では、ここまできれいに水が抜けるのか、というほど完全に水が抜けた状態だった。アースダムならではの芸当である。
釣り、ボート禁止。
駐車場と案内板。
<写真アーカイブス>