ほんごうちこうぶだむ。本河内高部水源池。
日本初の水道貯水池は、親が子を背負う逆タンデム型水没ダム。
坂のすぐ下にある長崎市街地への主ルートである国道バイパスから目だたない枝道へと入り、水道施設を迂回して対岸へとまわると草に覆われたアースダムが目に飛び込んできた。
ただのアースダムではない。なんとこれぞ日本最初の水道専用ダムなのである。しかもご隠居の身。
アースダムのすぐ後ろに低いコンクリート堰体が見える。この新しいダムがしっかりと貯水池を守っている。立派な洪水吐も構えられていて、上水道用途に加え治水機能もプラスされている。
明治のアースダムの方は、その懐に水ではなく土を満たし、ダム公園として地域住民に開放されている。なんと優雅な隠居生活。土木遺産的な価値を鑑みて、旧堰体を保存するため新ダムを後ろに背負わせるというめずらしい工法がとられたためだ。
わずか2km北西のところにある西山ダムは、やはり古い堰堤が保存されているが、こことは逆に通常のタンデム型。
日本で十数例しか確認していない水没ダムの2つの型が、こんな近くにそろっている長崎は、やはりすごい町である。