しんぜき。
池はほとんどアシで埋め尽くされ、干上がる寸前に見えた。
立ち去ろうとしたとき、視界のすみに、ふと違和感。アシのすきまから何か見えた。
近づいてみる。すると、アシの占拠からわずかに免れた小さな水辺に固定釣り台がある。しかし違和感の主はそれではない。何かそれとは違う気配を感じたのだ。
さらに近づいてみる。
驚いたことに、釣り台の上には無人の釣り竿。水面には浮子も立っている。椅子やえさ箱、酒の瓶。そこにないのは人だけ。
ちょっと釣り座を離れている、といった感じでもない。色あせた竿は時間の経過を表している。竿尻はひもで結ばれていた。
右側の池。左は大正堰