水辺遍路

実踏・日本の湖沼 6,450湖

頭佐沢ダム(山梨県北杜)

ずさざわだむ。

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発電設備の足もとから水がもうもうと湧き上がっていた。

何でもないような小さな池に見えて奥が深い。

まず頭佐沢(ずさざわ)という名がいい。この名だけでも行ってみたくなるが、ぐるり500メートル級の池がゴルフ場横の山あいにぽつり。発電施設のダムとしてはかなり小さい。
後背は高台の農地、ダム下は傾斜地がそのまま釜無川に裾を落とす。
ここは日本一の黒部ダムをはじめとする東京電力管理の44ハイダムのひとつであるが、なんとも地味なたたずまいである。この朝、黒部ダムであまりに多くの観光客にもまれてきた帰路に立ち寄っただけに余計に落差を感じるのかもしれない。

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しかしこの小場所はダムマニアにはたまらない奥深さもあるらしく、2017年にオフィシャル仕様のダムカードを発行するクラウドファウンディングが発足し、黒部ダムとならぶ19基の候補となっていて、あとは出資者の投票によって上位からカード化していくらしい。
今回の訪問でダムカード発行という掲示が現場に掲げられていたので、みごと合格組に入ったようだ。

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ダムカードに関する掲示


と思ったら、掲示内容がちょっと違う。水力100%電気料金メニュー『アクアエナジー100』の契約者だけがもらえるダムカードだそうだ。
いやはやこんな小さなダムのダムカードまで商売に使うとは。
しかもダムカード掲示のすぐ横に、超威圧的な「監視カメラ・侵入云々」の警告。釣りをしないでくださいとの看板もある。
釣りはともかく、ダムカードをもらうためには写真を撮るのが条件になっているというのに、ダムへのアプローチ路はクルマ止めがあるし、堰体を見学しようにも威圧と柵に阻まれ、この朝、黒部ダムでも少々辟易したが、どうも東電ダム群は苦手である。

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アプローチ路入口(左写真)。クルマが入れないようになっている。手前に駐車スペースはある。(右写真)


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ダム左岸側のスペース。フェンスとの間の人ひとり幅ほどの狭い通路が堰体の方にのびているが、小屋から先は進めなかった。


堰体、設備、立地のすべてに妄想がひろがる。

スペック上は21.5mとされる重力式コンクリートの堰体であるが、遠目にはどうみても数メートルほどの小堰堤。歩いては堰体に行けなかったので、空撮を試みようとしてが磁気干渉で離陸不能。水力発電設備の近くではままあることだが、どうしても堰体を見てみたくて場所を変えて再フライト。ダムにもっと寄りたかったが、磁気が怖い。

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堰堤のコンクリート部はどう見ても21mの高さはない。


堰体下側を見ると、土盛りの中ほどからコンクリート製の水路が出ている。ということはこの土中にコンクリートの堰体が埋まっていると考えられる。なぜこんな構造を採用したのだろう。ロックフィルダムと重力式コンクリートダムのハイブリッドダムはあれども、アースの皮をかぶった重力式コンクリートダムは他に例を知らない。
さらに下って沢の方に目を移す。沢に太い導水管が沿っている。これは1.1km下の釜無川まで達していた。

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また、インレット側の流れ込みも、あるにはあるが大雨時に排水されるようになっているだけで、このダム湖の水源本命ではない。
よく見るとインレットからも、やはり太い導水管が湖底を這って、発電設備へとつながっている。そしてここからは、もうもうと湧き上がるように水が噴出していた。
この導水管の上っていく先は、6kmも上流、長野県側の釜無川に取水口らしきものが航空写真で確認できた。

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ダム下は谷が落ちる先は釜無川。沢に沿って導水管。

この位置関係から、頭佐沢ダムは全長7kmの導水管の下の方に位置し、中継ぎの調整池の役割をしているようだ。導水管だけでも発電はできるが、頭佐沢ダムが流量調節や、あるいは夜間に発電機をモーターとして逆回転させての揚水発電の機能もあるのかないのか、妄想が広がるが、これについて明確な啓示を与えてくれるものも見つからなかった。東電にいる古い学友に聞けば分かりそうだが、それはもう少し先の楽しみにとっておこう。

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強烈な磁場を発生させている設備。わきからは導水管からの水がもうもうと湧き上がる。

設備は古いが、そこがまた迫力を醸し出し、見ごたえとしてもなかなかのものである。何より、ひっそりしているところがいい。
アプローチ路は釜無川側からと、高台側からの二通りがある。狭そうだったのでモンキーで行ったが、高台側からのアプローチであればクルマでもまったく問題なく行ける。ゴルフ場入口から敷地外縁を沿う道を行けば、離合困難というほどでもなく500mほどで到着する。

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マークした場所は駐車スペース。