水辺遍路

訪れた全国1万1,450の池やダムを独自の視点で紹介

奥津発電所調整池(岡山県鏡野)

f:id:cippillo:20181114084644j:plain
有形登録文化財にもなっているバットレスダム構造の堰体であるが、堤高は15mのハイダムスペックを満たさないため、いわゆる現存バットレス6基の数には入っていない。

数字に入っていない第七のバットレス。

紅葉の盛り。奥津発電所調整池の直下にある奥津温泉では、この時期限定のマイカー規制が行われていた。規制内容によっては歩いて行くことも覚悟したが、温泉から池まで1km程度なので、何とかなるだろう。
マイカー規制の範囲は奥津温泉のはずれから奥津渓の方面だったので、結果的に調整池方面は規制ルートからはずれていたが、警備員さんが飛び出してきた。
「バットレスに」と方角を示すと、けげん顔ながら通してくれた。面倒なやつと関わりになりたくないと思われたのかもしれない。

f:id:cippillo:20181114084650j:plain
奥津温泉。
f:id:cippillo:20181114084648j:plainf:id:cippillo:20181114084649j:plainf:id:cippillo:20181114084651j:plain


 

堰堤までの道順について。

岡山の津山と鳥取を結ぶ国道179号は、交通量は少ないながらも高規格幹線道といえる走りやすい国道で、このあたりでは「奥津渓バイパス」となっている。
トンネルとトンネルのあいだに、奥津温泉への入口がある。ぐるりとカーブした先が温泉街。吉井川にかかる橋のたもとに日帰り温泉施設があり、川岸には足湯もあって雰囲気がいい。この道はバイパス化される前の旧道であろう。そのまま進めばすぐにバイパスと合流するが、そこに道の駅もある。
さて調整池へは、この旧道から山側に入る。いったん日帰り温泉を目標にすれば楽だろう。駐車場も広いし温泉スタンドや足湯もあるので、ここでじっくりナビや地図に向かいあえば迷うこともないだろう。
この温泉施設駐車場を出てすぐ、郵便局のある角を右折して山側へと進む。道は1.5車線の登りで民家のあいだを縫う。ここから「星の里キャンプビレッジ」の道しるべ看板をたよりに進む。といっても一度右折するだけで、ほぼ道なりに700mほど、キャンプ場の駐車場に着く。

f:id:cippillo:20181114084652j:plain
クルマからは左手にこんな風にキャンプ場の駐車場が見えるので迷う心配はない。


左手にキャンプ場の駐車場がある状況で、右手に狭い分岐路がある。ここからは離合困難な隘路になる。一ヶ所、きついヘアピンカーブがあるので大きいクルマや運転に自信のない人はキャンプ場にお願いして、ここからは徒歩の方がいいかもしれない。調整池まで400mほどである。
奥津発電所調整池が完成したのは戦前の昭和7年(1932)。名のとおり水力発電用の設備群のひとつであり現在は中国電力が管理している。
登録有形文化財に指定されているが、奥津発電所の複数の施設群が要素になっており、この池はそのひとつ。登録名は「奥津発電所調整池」で、どういうわけか堰体の名が見つからない。
バットレスダムとはいっても、堤高は15mのハイダムスペックには届かず、文化財登録がダム名ではなく池の名になっているのも不運だった。第七のバットレスダムとして認められていないのは残念なことだ。
それにしても、これほど気さくなバットレスダムがあるだろうか。
北海道の笹流ダムは親しまれているバットレスとはいえ往年の老俳優を思わせるが、こちらはまだ無名無冠(ほんとうは無冠ではないけれど)、握手会で会えるような身近で等身大の雰囲気があった。

f:id:cippillo:20181114084642j:plain
コンクリート堰堤は高さはないものの長さがあり、途中で折れ曲がっている。
f:id:cippillo:20181114084644j:plainf:id:cippillo:20181114084643j:plain


f:id:cippillo:20181114084647j:plain
有形文化財の登録名は、なぜか調整池。右側の岸はバットレスダムの傾斜した擁壁。水はきれいだ。


f:id:cippillo:20181114084646j:plainf:id:cippillo:20181114084641j:plain
調整池へのアプローチ路。


マークした場所は道の駅。