かがみいけ。東大寺。
国宝にはさまれた池に馬魚が泳ぐ。
東大寺境内にあり、運慶・快慶作の阿吽(あうん)の金剛力士像に頭を下げつつ南大門をくぐると、参道右側に中門と大仏殿を奥に鏡池が広がっていた。
大仏殿を池面に映しだし、鹿が草を食む光景はまさに世界遺産の古都らしい風格。古都奈良の水辺では、興福寺五重塔横の猿沢池と並ぶ双璧といって差し支えあるまい。
奈良県の寺院では古くから馬魚(ばぎょ・うまうお)を池に放ち、水草が殖えすぎるのを防いできたそうだが、この鏡池にも馬魚が生息している。
馬魚とは琵琶湖・淀川水系原産の日本の固有種ワタカのことで、現在は全国に生息分布を広げているが、同時に絶滅危惧種でもあり、奈良県では特に天然記念物に指定されている。