かたそばだむ。
謎めいた第三の「黒部ダム」を追って
天草下島の池めぐりをしているとき、隣の獅子島にGoogle マップ上で「黒部ダム」なる池を見つけ、翌朝いちばんのフェリーで獅子島へ渡り現地へ。
しかしそこにあったのは堤高7.5mの平野溜池だった。
黒部ダムは単なる記載ミスか。ただ、島には平野溜池より規模の大きい池がもうひとつあった。地図に名は出ていない。ダムというなら、こちらの方が可能性があるかもしれない。
現場に立ってみると、艶やかな水をたたえた海の見える貯水池だった。谷を300mほど下ると獅子島の玄関口である片側(かたそば)の港と集落がある。
谷を堰いているのは切り欠きのある砂防ダムタイプのシンプルなコンクリート堰堤。一見、砂防ダムふうだが、離島ではこういったスタイルの上水道水源池があるという事例は対馬などで見ている。
堰体にはバルブ付きの管が据えられており、岸伝いに管をたどると右岸側に浄水設備が待ち構えていた。
この設備の立入禁止看板の署名は「長島町水道課」。島の上水道水源池として間違いなさそうだ。
それにしてもいい池だ。池畔で釣竿を振ってみる。ルアーに反応する魚はなし。
池畔でごはんを食べていると、水面を揺らす大きな波紋。正体は鯉だった。



そこにあったのは「ダム便覧」未掲載ダム?
いま一度、堰体まわりをじっくり観察すると、木々のすきまから銘板プレートが見えた。
望遠で追うと、ダム名なり池名は記されていないようだったが、「ダム高 23.0m」と記されているように見える。
役場のある長島へ小型フェリーで移動
めざすは浄水設備に署名があった長島町役場の水道課。
船の中で船員さんと乗客にこの池のことをたずねてみる。誰も名前は知らなかった。念のため「黒部ダム」を聞いたことがあるかという問いにも、土地に思いあたるものはないとのことだった。
次に役場へ。しかし水道課は別の場所にあるとのこと。水道課に電話してみると、「片側ダム」との名。ただ、正式な名かどうかは分からないので、県の方に訊ねてみてほしいとのこと。それと、「黒部ダム」という名は間違いではないかという話だった。


とりあえず、この片側ダムは「ダム便覧」未掲載のダムである可能性は高そうだ。目下、ネットにも「片側ダム」名での情報はなく、工事入札でもこの名称は見つからない。上水道水源池なのに、島の人も役場の人もよく知らないというのは、ちょっと不思議。
それにしても、黒部ダム。人騒がせな地図表記ミスらしきものが発端とはいえ、予定外の思いがけない島池たびができた。

