池の近くにある二つの寺の使いをしていた犬にまつわる悲話伝説が残る。といっても、なんのこっちゃという感じだろう。
池をはさんで山側と麓側にある仙遊寺と栄福寺(ともに四国八十八箇所)の管理を兼務していた住職が、愛犬が賢かったものだからあれこれお使いをさせていたのだけれども、この住職、とにかく忙しくて鐘がなった方の寺にすぐに来るように犬に教えこみ、犬の方もよく務めた。ちなみに池の堰体下にウォーキングの案内板があり、両寺の間は歩いて50分とのこと。
ある日、両方の寺の鐘が同時に鳴ったので、犬は困って中間にある池のほとりでまごまごしていたところ足を滑らせて溺れてしまった。犬が可哀想で犬塚を立てた。これが池の名の由来だとか。今も堰体下に石造りの犬塚がある。
住職にとっては両寺とも管理者兼務なので同時に鐘が鳴ることは想定外だったのだろう。誰かがいたずらで、あるいは参拝して慣らす可能性を考えると、合図として、ただ慣らすのではなく、ゴ、ゴ、と二回半打ちしてゴーンを合図にするとか、あるいは取り消しの合図を決めておけばよかったのかもしれないが、想定外とは、そんなものだ。
東北地方の南会津には犬ならぬ牛の類話がある。犬塚池の犬と同じように、一人で人のお使いができる天才牛であるが、やはり池に落ちて死んでしまう。沼尾沼という山池である。
犬塚池は里池であるが堰体はダムスペックをも満たす堂々たる池である。細長いワンドが幾重にも連なってミニ満濃池といった感じ。ワンドが深いだけに今治のローカルメジャーのバスポンドでもあり、鹿の子池とのセット攻略が定番。