水辺遍路

訪れた全国1万1,100の池やダムを独自の視点で紹介

路谷池(兵庫県淡路)

ろだにいけ、ろたにいけ。
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2019年10月16日、17日に、池の水を全部抜く「かいぼり」が行われた。
淡路島では2019年の秋からの農閑期シーズンに10ヶ所前後の水抜きを予定。詳細は「淡路島ため池拘留保全」のFacebookページで見ることができる。

淡路島北部の主要ため池のひとつ。
一帯には河内ダムをはじめ、ダムスペックの大型の溜め池もある。ここ路谷池も古い資料では堤高16mとなっている。見た目でもじゅうぶんハイダムスペックを満たしていると納得できるが、じつは溜め池台帳に記載されている数字は11m余。計測方法が厳格になり、見た目の大きさとは異なる算出結果が出ているようだ。
過去に50オーバーのブラックバスの実績もあるというのも納得のスケール感。最奥部のインレットには高速道の高架橋が見える。左岸側のワンド奥にはさらに二連の池、右岸側にも池がひとつある。
淡路島では池の管理者のことを田主と呼ぶ。小さな池にも大きな池にも田主が必ず田主がいる。路谷池の田主さんは、上下に従える小さな池たちも合わせて管理しなければならないので、苦労はたいへんなものがあっただろう。
すぐ近くの河内ダムでは、管理者は田主ではなく土地改良区などの水利組合。改修の際に小さな池にかかる予算をダムに統合し、集団で管理する全国共通の流れがみてとれる。立派な取水塔もあり、アプローチ路や管理道も整備されている。一方、池の規模は似ていても個人管理の路谷池はアプローチ路も驚くほど狭い。
天端を舗装路が通る堰体の脇には、淡路島共通の青い池名標識のほかに歴史を記した案内板も立っている。
二つの看板ともに路谷池のルビが振られているものの、ひとつは「ろたにいけ」で他方は「ろだにいけ」。どこかで読んだ話だが、橋など水に関わるものの名に濁点を付けると水が濁るといって嫌ったといった考えもあったというから、「ろたに」と書いて「ろだに」と読むような運用(?)がなされていた可能性もある。
さてこの案内板によると、路谷池の築造は江戸時代。
土地の名主が私財を投じて造った。10年かけて藩から返済してもらうはずが明治維新でチャラに。財を失った一家は北海道に永住の地を求めて旅立つことになる。
のちに感謝の気持ちをこめて顕彰碑が建てられた。
淡路市は自治体として日本一のため池数を誇るが、どんな小さな池にも、池の数だけドラマがある。

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堰体はダムスペックを満たす、と思いきや。


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岩盤質の左岸側に設けられた取水設備。


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案内板。


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お立ち台のようなものは、底樋の工事用か。堰体の反対側にもあった。