水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

翠ヶ池(岐阜県白川)

みどりがいけ。
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白山お池めぐりのハイライトだが

百名山・白山の山頂火口湖群(お池めぐり)のひとつ。 標高2,550m前後に七つの名の付いた池があり、「山頂お池めぐり」という絶景コースが設定されている。
コースは翠ヶ池手前の小峠を境に石川県から岐阜県に踏み入る。よって七つの池のうち、この翠ヶ池だけは岐阜県に属する。お池めぐりの七池では最大でハイライト的な位置付けだけにちょっと変な気がする。
翠ヶ池のビューポイントに立っている案内板には「石川県」と設置者の署名があった。うむむ。池は岐阜県のものだけど、このビューポイントと遊歩道は石川県側にあるのかと思って航空写真を見てみるも、やはり岐阜県側にあるような。
こんな看板ひとつをとっても、両県の間に協議があったのだろう。
そもそも県境を策定した会議が気になる。翠ヶ池を岐阜側に割譲するかわり、ほか六池と池めぐりコースの権利という実利を石川側が取ったとか・・なんか、そんな島があった。

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翠ヶ池の案内板。右下に石川県と署名があるが、池があるのは岐阜県。
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400年前に噴火した火口

古文書に残る1042年の噴火では、二人の童子が山頂に現れて二つの穴を掘り、その岩で室堂を埋めた。そのひとつが翠ヶ池だという不思議なテイストの伝承が記されている。
翠ヶ池が火を噴いた最後の噴火は1554年。このとき小規模ながら火砕流が発生した痕跡があるという。
となれば二人の童子とは、踊るように夜空を焦がす二本の火柱だったか、あるいは青空に湧き立つ二本の白い噴煙か・・火砕流によって広い台地が生まれたなら、千年前のいにしえびとが伝説に昇華させた観察眼の鋭さを感じる。
400年以上が経過した今も、翠ヶ池のまわりにほとんど草木はない。

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けっこうすごい崖っぷちにある

翠ヶ池の東側斜面は、わずかな堤部分を残していっきに片流れに派手に崩れ落ちている。切り立った崖の上に池があるような危うさに、地形萌えせずにいられない。
最近の風潮では、インクを溶かしこんだような青い池がもてはやされる。私には生物の棲めない死の色に見えてしまうので、おもしろいとは思うけど美しいかといわれたら、うーん。これを絶景というなら、絶景の感覚が世間とはズレているかも。
けれど、このすごい地形、キワキワなところに湖面を差し出しているがゆえに、スパッと切ったように成層圏の紺碧が湖面にのっかっているさまは、絶景という言葉に値する。ここに掲載した写真では、そんなキワキワな感じも楽しんでいただければ。

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