無人島の世界遺産に寄り添う、ありえない立地のダム
野崎島は21世紀になってから、長らく無人島になっていた。
2018年、この島が一躍脚光を浴びる。島の集落跡やキリシタン潜伏の歴史といった文化的価値が評価され、なんと世界遺産の構成要素になってしまったのである。国の方もぼーっとしていたわけではなく、世界遺産認定に先駆けて「重要文化的景観」に指定していた。
島の地形は本島となる2km隣の小値賀島とは対照的で急峻。火山活動による山岳が北と南にあり、はさまれるように中央のくびれた部分がなだらかな鞍部となっている。
そういえば佐渡島もそうだし八丈島も同様の地形だ。
このなだらかな股のような場所に集落もあったわけだが、集落と反対側にでんと貯水池が鎮座し、航空写真を見ると尻の穴みたいでけっこうビックリする。
だいたいこのダム、堰体直下が海で、堤体のスロープは突き出した桟橋に直結していて、漁船なんかが出入りしている。
しかも完成したのは島が無人島になるのとほぼ同時。
なんなんだ、この池は!?
なんと農業用ダム。でも農地はどこに・・?
この池は野崎ダムといって30mもの堤高をもつハイダムだったりする。
しかも砂防ダムとかではなく、驚きの農業用アースダム。農業たってダム下には海が広がっているだけだし、そもそも無人島。
じつは2km離れた小値賀島に海底パイプラインで農業用水を送り込んでいる。
小値賀島の方は全体的にフラットな地形で農地を造るには好都合ながら集水が難しい。それなら隣の島から持ってきてしまえという大胆さ。しかも世界遺産の島になってしまったり。
送水だけでなく集水も特殊。山にはさまれた鞍部にあるとはいえ流入する川なり沢がない。よって承水路という集水ルートを人工的に設けているようだ。なんたる変わり種。全国9千の池を見てきたが、こんな池はもちろん初めてである。
激レアのプレミアム・ダムカードも!
野崎ダムは固有ナンバーが付された枚数限定のプレミアム・ダムカードが発行されていると長崎県のオフィシャルサイトに出ていた。ツアー参加者や、ダムに行って証拠写真を持ち帰った人しかもらえないカードなので難易度高し。令和元年の情報なので品切れになってなければいいけど。
アプローチは船+徒歩のみ
町営船便が小値賀島から出ていて、20分ほどのショートトリップではあるが、1日1〜2往復しかない。
島に上陸するにあたり、乗り物は自転車さえダメ。徒歩のみでガイドを受ける必要もあるようだ。
キャンプ場はあるものの店はない。
野崎島、小値賀島、中通島の位置関係
池さんぽマップ
ver. 1.5 2023年2月更新。
中通島の先端から
小値賀島から見た野崎ダム