水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

室の八島(大神神社)(栃木県栃木)

 栃木市中心部から東にわずかに進むと、古来からの歌枕として名高い「室の八島(むろのやしま)」だ。
 下野(しもつけ)のなだらかな田園の中にこんもりと鎮守の森が点在し、島のようである。そのひとつに大神(おおみわ)神社がある。最近になって栃木市からのびるバイパスがすぐ脇を通るようになってしまったが、以前来たときはあぜ道のような道を進んでたどりついたので、その森閑さといい、感慨はひとしおであった。
 ここを室の八島と呼ぶ由来は、大社の境内にある池に浮かぶ八つの小島による。江戸時代には水が干上がっていたようだが、この池からたちのぼる靄(もや)が杉の巨木を通して差し込む陽光に映えるさまはさぞかし神秘的なものだったろう。今は池に水ももどり、小庭のような8個の島を橋でつないだちょっとした島めぐりを楽しめる。また、室の八島を歌枕として和歌の中に詠みこむときは、「煙」にちなんだヒネリを入れるのが風流のみせどころだったようだ。
 境内には芭蕉句碑のほか、古来の和歌を刻した碑もある。(「バトルツアー奥の細道」より抜粋・写真も)