首相官邸前の溜池山王駅。溜池はどこに?
都心にある地下鉄・溜池山王駅。若いころからずっと気になっていた。
首相官邸もある日本の中枢ともいえる場所の、いったいどこに溜め池があるのだろう。それに、なぜ山王溜池ではなく溜池山王という語順なのか?
話は江戸時代にさかのぼる。
江戸城下の生活用水は、神田川から取り込む神田上水、つづいて多摩川の水を羽村取水堰から延々と40kmに渡って人工水路で引き込んだ玉川上水によってまかなわれていた。
上水開通前は川を堰き止めた溜め池が使われていた。江戸城のお堀のうち「淵」とつくものは水道水源ダムとして利用されていたらしい。また、現在の地下鉄・溜池山王駅のあたりにも水道水源用の溜め池があったということだ。
区間は、赤坂見附から虎ノ門にかけての外堀通り。溜池山王駅はちょうど細長い池の真ん中あたり。
日枝神社と山王稲荷が鎮座する山王台地(星ヶ岡)は、そんな池の前にこんもりと緑をたくわえていたのだろう。そんな往時の風景は、都心中枢の現在の姿からは想像しがたい。
さて溜池山王のネーミング。今も昔の姿を残す山王台地に、ロストレイクのなごりを冠したものと推察されるが、「溜池」が付く駅というのは全国的にもあまり見たことがないだけに、もはや池もない場所に「溜池」の名を残そうとし、同意した人々の熱い思いをいつか聞いてみたいものだ。