たくみのいけ。
内匠長者と龍神の池伝説が眠り、奇岩が見おろす二段の溜め池。上池と下池の二つの池をもって内匠の池と呼ぶ。
江戸時代のため池築造記録になぜかこの池だけは改修の記録しかないといい、いつごろ造られた池なのかさだかではない。
そういえばラジオ番組の「赤江珠緒のたまむすび」のオンエアー中にパーソナリティーの赤江さんから、箱根のお玉ヶ池について、お玉さんが伝説になる以前は、池の名前はどうなっていたのかと訊かれて、はあーっと逆に感心しまって、まったく答えられなかった。
伝説の池は伝説の舞台になっているのだから、たいがいは伝説となる事件が起こる前から池があったはず。ならば池の名前は伝説によって塗り替えられていくものなのか、考えてみればもっと早く気づくべき視点だった。
内匠の池もまた、伝説が名の由来となっている。伝説は「遠い昔」としか語られていないが、この池の築造の記録がないのは、内匠長者の伝説との時間的な整合性を担保するため、あえて江戸期の記録から消されたのでは、という歴史ミステリーを妄想してしまうのだった。