くずまるこ。葛丸ダム。
宮沢賢治が野宿の夜に見た「あやしきもの」とは?
現地の案内板の言葉を借りれば、山ひとつ隔てたお隣さんの山王海ダムと「親子ダム」にするべく計画された。
双方ともに国営の農業用貯水池であるが、山王海ダムの方は貯水量のキャパシティが高い一方、入ってくる水の量がそれほど多くない。葛丸ダムの方は貯水キャパシティは小さいものの、たくさんの水を集めやすい立地にある。
貯金箱は大きいけれど収入が少ない親に対して、貯金箱は小さくても収入が多い子が、地下に掘られた取水トンネルと導水トンネルの二本を通じてお互いに必要な水を融通しあうという、そんな親子ダムの関係である。
一帯は歴史上、水争いが苛烈な地域であった。農業の研究者だった宮沢賢治が調査のため葛丸川の山々を三晩も野宿しながら踏破した。その情熱を支えたのは、地域の厳しい状況をなんとかしたいという思いだったのかもしれない。
安定的に水が得られる時代になった今、ダム湖畔には宮沢賢治の手による「葛丸」の歌碑が立っている。
ほしぞらは しづにめぐるを わがこころ
あやしきものに かこまれて立つ
野宿の夜につむいだ歌に詠み込まれた「あやしきもの」は、いったい何だったのだろう。童話作品「楢ノ木大学士の野宿」にヒントがあるかもしれない。
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マークした場所に駐車場。