じるぞういけ。ジルゾウ池。
その印象深い名前と、期待を裏切らぬ山上の池。
このインパクトある名前。初めてその名を聞いたときから、ぜったい行ってみたいと心に深く刻まれた池である。
それにしても、なぜジル蔵? カタカナで「ジルゾウ池」と記載するケースもあるようである。人の名なのか、なぜカタカナが入るのか。
下調べではジル蔵池は太平洋に面した農地の奥の山間部にある。(上写真)
谷池タイプでダムスペックを満たす溜池がいくつか集まっているが、多くの池はアクセスルートが難しく厳しい。
しかしその分、この時代にはめずらしくブラックバスもけっこうな数を確認できたし、ジル蔵池には地元のへらぶな釣り師が通っているという話なので特に楽しみだ。万全の体勢をとる。
まず地元のへらぶな釣り師が行くということは、とりあえずクルマで池まで行けると考えられる。へら釣り師は道具の分量が大きいので、東京都心部の釣り師ように自転車や公共交通機関で運べるモバイルなへら釣りパッケージを自作してシステムとして確立しているような特殊な例をのぞけば、まず移動はクルマと考えられるのである。
豊住魚釣場(東京都江東)で見たモバイルへらシステム。
墨田公園魚釣り場(東京都墨田)で見た手製のモバイルへらシステム。
クルマで行けそうだと分かっても、ハイエースではあまり無理はしたくない。近くの丸塚池にアプローチした施策と同じく、とりあえずカーナビを駆使して近づけるところまで近づいて、あとは折りたたみ自転車を射出する考えだ。それも難しいようだったら、空からジル蔵を捉えるべく空撮機材も起動できるよう準備を整えた。
アプローチ路は地図で見るよりも分岐が多く、やはりすんなりとは正しいルートをたどれなかった。
また通常であればジル蔵池のような独立した谷池タイプの池の場合、アクセスルートは標高の低い海側から山頂方向へと沢を伝うことがほとんど。しかしジル蔵池に関してこの法則は成り立たない。なんとジル蔵池の堰体は海に向かってそっぽを向くかっこうになっている。
上の空撮写真では写真下が海側だが、堰体が向こうを向いているのが分かる。
山をぐるっとまわりこむように水路となっている沢が流れているためこういうかっこうなっているが、空撮写真では海のある手前側に向かっても沢があるのが分かる。アクセス路はこのダミー沢とでもいうべきものを伝うルートをとっているので、ちょっとややこしいのである。
とはいっても、ちゃんとカーナビはジル蔵池までのルートを表示してくれている。結果的にはハイエースでも池のインレット側までたどり着くことができた。道もかなり狭いところもあるが舗装はされていた。
舗装が途切れたところが転回スペースになっている。ここから先は池岸伝いにぬかるんだ道が堰体までつづく。ここにクルマは置いていくことにした。転回スペースに駐車したできたが、他のクルマが来ると迷惑になるのでジル蔵池でのへらぶな釣りはあきらめ、とりあえず池の姿だけでも拝もうとトレールランニングシューズに履き替えて進んだ。
山頂にある池なのに最初にインレット側に到達し、そこからぐるっとまわって堰体側に行くという構造自体、やはりこのジル蔵池、かなり不可思議だ。それにしてもこのぬかるんだ道に轍のあとがある。地元のへらぶな釣り師、おそるべし。
木々のあいだからついに垣間見えたジル蔵池。漂白されたように真っ白な立ち枯れの木が湖面に立っていて、じつはちょっとドキっとした。ああ、ついにジル蔵池に会えた。
二つのワンドを経て300mほど進むと堰体に出て、さらに眺望がひらけた。
堰体は21mの高さがありダムスペックを満たす。へらぶな釣りの方面からジル蔵池を知ったこともあり、当初は名前も含めて真偽のほどはどうかと思っていたのだが、じつはダムマニアのあいだではわりと知られた池で、ダム便覧にも記載されている。
ああ、ジル蔵池。
ああ、ジル蔵。
ああ、ジル。
洪水吐に渡された橋がわりの電信柱? この洪水吐および堰体斜面がへらぶな釣りのポイント。
へらぶな釣り師の私物置き? 複数並んでいた。
周辺の立地はこんな風になっています。ジル蔵さん妄想図を加えたver2.2に更新。
マークした場所が転回スペース。
<その他の写真>