水辺遍路

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旧相模川橋脚 大正期保存池の再現池(神奈川県茅ヶ崎)


池から突き出した10本の木の柱は、いずれもレプリカ

池の水面から木杭のようなものがニョキニョキ。その様子はまるでアート作品のよう。
じつはこの池、鎌倉時代の橋脚跡というかなりレアな歴史的遺構を保存展示するための特殊な用途の池で、大正時代に国指定史跡にもなっている。
鎌倉時代にはこのあたりに相模川が流れていた(現在とけっこうズレている!)のも驚きだが、これらの柱は関東大震災後に、何もなかった水田から突如、出現したというからさらにビックリ。当時、直接これを見た人たちはそれこそ仰天しただろう。
池のかたわらにその当時の写真があって見入ってしまう。
ただし!
じつは水面から生えている10本の柱はすべて精巧なレプリカ。本物はというと、風雨によって腐食しないよう地下2.6mの土中に埋められているのだという。

レプリカの直下2.6mのところに、瓜二つの本物が埋まっている!

さらに!

木杭のみならずこの「池」自体も、橋脚を保存するために周堤や木柵で水田を改造して造られた大正期の「保存池」を、当時の写真や発掘調査によって得られた知見をもとに「再現」したレプリカ池。
水草が水面を埋め尽くした四角い昭和時代の保存池を更新するかたちで、わざわざ大正期の保存池レプリカに造り直したというわけ。
文化財を保存するというお仕事の池があるのもおもしろいと思ったけど、昔の保存池の姿を今に伝えるためのレプリカの池という二重フェイク、いや、パンダがパンダの着ぐるみを着ているような素性に萌えてしまうのだった。

関東大震災後の写真と、大正期保存池についての説明は池岸のタイルに埋め込まれている

よく見ると、木杭と板を使って大正時代の保存池の岸を再現していて凝っている。しかしコンクリートタイルの歩道と連続しているので、せっかくの再現が目だたない。ここはタイルの歩道部分をあえて土のままにして、木道のような渡り通路にしたら、大正期のレプリカ池であることが際立っただろう。手前は余水吐のグレーチング。これは再現ではなく現代のもの