おおくぼやまだむ。
陸の孤島の山奥にひっそりたたずむ全国二位のアースダム。
高知県との県境も近い愛媛県南部の愛南町。このところ高速道路整備が進む四国にあっても、愛媛側からも高知側からも高速道の末端からそれぞれ50kmほどあり、鉄道も届いていない町である。
町の周囲に広がる農地のところどころにいくつか溜め池も見られるが、町から少し離れた山奥に親分のように鎮座するのが高さ55.8mの大久保山ダムである。
気候としては雨の多い地域であるせいか、愛南野池のボスキャラとはいえ、コンクリートの大げさなダム形式は選択されなかった。いってみれば高度経済成長期のアースダムである。
それが、九州の清願寺ダムに次いで全国二位の高さをもつアースダムとなった。
それにしても長い、あまりに長い堰体だ。アースダムでありながら農業のみならず生活用水も供給する多目的ダムでもある。
50万立方メートルにもなる材料の土はほとんどを周辺から採取したというから素晴らしいエコダムである。
堤の内側は石組みになっていて、ロックフィルダムのようにも見える。しかしアースダム以下の土盛りの溜め池でも、現役のものは多くが内側をコンクリートブロックで補強していることを考えると、これだけ大きな大久保山ダムが石組みで消波しているというのは、ある意味すごい。
堰体上は道路になっており、水泳とボートを禁じる看板が立っているが、釣りは禁じられていないようで、ブラックバス釣りで訪れる人もいるようだ。
アプローチ路はやや分かりにくく狭い林道が2kmほどつづくし、立地的にも気軽にというわけにはいかないが、アースダムファン、日本語でいうところの「野池好き」としては、はずせない水辺といえよう。
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