南城公園(みなみじょうこうえん)。
名前のちょっとした違和感から。
市街地はずれにある南城公園に隣接する池で、左岸側の丘(上の写真ではダム湖の右側)には戦国時代の与良城の本丸があったが、現在は公園敷地となっており、芝生の広場に遊具が設置されている。かろうじて往年の雰囲気を残す雑木林の中に遊歩道も整備されており、ベンチのある展望スポットからは貯水池を見渡せた。
堰体は重厚感のある古い重力式コンクリートダムで、ダムサイトに立つには反対側の右岸側にまわらなければならない。
感覚的にはハイダムであろうか。20門以上のアーチ形状の洪水吐を連ねた強烈な個性を放つデザインといい、人の一生分ほどの歳月を風雨にさらされてきたような色の厚み。それなのに、なぜかこのダムについては正確な諸元などが出てこない。
地図や現地の公園案内板には「小諸発電所用水池」との名が記されている。ちょっとだけ違和感を感じた。防火水槽ならば用水池でも分かるが、目の間にあるのは、そんな小さな箱池ではない。家に帰って調べてみると、ほどなく正式な名らしきものが分かった。
小諸発電所第二調整池。
第二調整池というからには第一調整池もあるはずで、と進んでいくと、小さな違和感から意外な事実に突きあたった。
高低差のある公園には、低い方の敷地に球場、マレットゴルフ場、スライダー付きのプール施設などがある。まわりより一段低くなったこの平坦な土地は、どうやら90年前までは、第二ならぬ第一調整池の湖底だった。
1928年8月29日に消失した第一調整池はその後、再建されることはなく、かわりに7km離れた佐久市に新しく造られた池に「小諸発電所第一調整池」の名が引き継がれた。しかし、その池でもいつしか第一調整池の名はすたれ、今、土地の人々はまったく別の名で呼んでいる。
マークした場所は南城公園の大駐車場。