水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

蛇の舞池(和歌山県和歌山)

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四車線道路が池をまたぐ。

奇妙な名の池である。おそらく日本中探しても同名の池はあるまい。
少し離れた滋賀県の話になるが、琵琶湖近くの長浜八幡宮では、毎年八月、雨乞いの神事を起源とする「蛇の舞」という奉納芸能が開催されている。これは龍(古来、龍と蛇は同じ意味で扱われることが多い)をかたどった巨大な張り子を数人の担ぎ手たちが放生池の中まで入って練り歩くという、全国に例をみない神事だという。
上高地の明神池(長野県)をはじめとする舟を浮かべるタイプの池神事や、桜ヶ池(静岡県)のように人が泳ぐタイプの池神事はあれども、巨大な龍の張り子で池の中に入っていくという池神事は確かに聞いたことがない。
篝火に浮かび上がる水面を這って練り歩く龍。花火でクライマックスを迎えるサービス感のある演出がなされているが、この形になったのは昭和23年以降で、それ以前は蛇組という一団によって別の池でひっそり行われていたという興味深い報告もある。

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さて蛇の舞池について。紀の川右岸にみごとにベルト状につらなる溜め池群のひとつなので、紀の川流域野池群に組み入れたいところだが、この丸池のあたりでは紀の川は河口を過ぎて海にになっており、海岸までわずか650mで丸池と隣接。
地形と立地から丸池を下池とする上池と考えるが、立派な道路がフタをする前は、それこそ蛇が舞うような池だったということだろうか。
今は住宅が多くなっているが、かつては海岸沿いの畑地を潤してきたのだろう。
四車線道路が池をまたぐかっこうになっており、すこし気の毒な感じだが、橋から下をのぞくと池はかなり浅くなっていて底がかなり近い。よもや秘密の講組織が蛇の舞を行うために、あえて浅い底の池を造ったということもあるまい。
それでも魚影は濃く、さっと見ただけでもアカミミ亀にブルーギル魚群、さらにブラックバスの幼魚群の姿も。幼魚がこれだけいるということは、と思ったら、子らをやや遠巻きに40cmはありそうな親魚が人影に物怖じする様子もなく悠然と泳いでいた。

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悠然と泳ぐ親魚。下は稚魚群とブルーギルと亀。
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特に減水状態というわけでもないのに、魚の影が底に映るほど浅くなっていることから、土砂の堆積で貯水機能はかなり喪失されている。肉食性の外来生物の密度が濃く、この子たちも先々、食べ物の確保に苦労しそう。その先には共食いという熾烈な生存競争が待っている。あるいは、橋下の広大な空間に思いも寄らぬ生態系が?
看板は紀の川流域の野池群では初めて見るタイプでした。
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