【さひないためいけ。佐比内鉄鉱山遺跡】
民話の里を潤す池。その底には世界遺産級のお宝?
座敷ワラシと民話の里、遠野郷を包み込む丘陵をうがつ猫川の本流を堰くハイダムスペックの農業用溜め池。
猫川は川のヌシが猫とされ、そんなところも妖怪ちっくな川でもある。一級河川指定区間を堰いているようなので、溜め池自体も一級河川か。
堤高27mでアースダムとしては巨大。前法面がアスファルトフェイシングとなっていた。
遠野には遠野ダムと遠野第二ダムの二つ、ダム名の付いた貯水池があるが、もうひとつのハイダムのここ佐比内溜池は戦前(1931年)に竣工したこともあって、ダム名ではなく溜池名になっている。
カッパや座敷ワラシなど妖怪が今なお息づいているかのような土地だけあって、この池にもなるほど曰くあり。
なんでも、江戸期に開かれ明治まで鉄を生産してきた佐比内高炉が湖底に眠っているのだという。この数十キロ圏内には10基の高炉があったらしく、そのうち橋野鉄鉱山は世界遺産にも認定されている。
1978年の宮城沖地震後、堰体の修復工事をする際に水を抜き、この産業遺産の調査も合わせて行われ、1号炉が確認され遠野市指定史跡に。
規模は世界遺産の橋野鉄鉱山と変わらないとの調査結果もあり(佐比内鉄鉱山遺跡)、湖底にもうひとつの2号炉が発掘されれば、遠野市史跡から世界遺産に五段抜きの大出世か。
遠野には民話だけでなく、アイヌ語由来とされる地名も多く、ミステリアスな地名に魅力が宿る。
佐比内も「サッ・ヒ・ナイ」で、意味は「水枯るる石塊の川」との説も。そもそも「遠野」自体が「トオ・ヌップ」、すなわち「湖のある丘」!! マジか!!
大雨が降れば洪水を起こし、平時は伏流水で水無し川に。そんな猫川の本流を堰く計画が本気で計画されたのは大正時代だった。
記念碑の署名は遠野東部土地改良区とあるが、アプローチ分岐にある立入禁止看板は遠野市土地改良区となっている。
林道からは眺望が得られなかったが、林野庁のオフィシャルサイトには展望台があると記されている。
役所広司主演の映画「蜩ノ記」ロケ地。
アクセスはダートの林道。道幅のあるフラットダートでおよそ2km。
- 作者:葉室麟
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蜩ノ記(ひぐらしのき) Blu-ray(特典DVD付き2枚組)
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マークした場所は、堰体へのアプローチ分岐の正確な位置。