水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

JR船橋市場社宅給水塔(千葉県船橋)


取り壊し危機の給水塔・・船橋の再開発でレガシーとして生き残るのか?

四本の細い円柱の上に戴冠されたバレル形状の鋼製タンク・・胎動を始めた市場の隣で白む暁の空を背にすっくと立つ姿には、どこか神々しさえ感じてしまった。
配水池の中でも特に人気のカテゴリーとなった感のある団地給水塔であるが、これもマニアたちの長年の尽力による賜物であろう。
船橋市は全国的に見ても配水池の聖地ともいえる豊富な物件を抱えた土地であるが、残念ながら団地給水塔に関しては老朽化と再開発の波に呑み込まれ、取り壊しと消失の危機に瀕している。
市場横にあるこの団地給水塔は、そもそもは団地の建物に囲まれ、すぐ近くに双子の給水塔も立っていた。それが訪れた日には、ただ瓦礫が広がるさら地に一本のイチョウの大木とともにポツンと給水塔が残されているだけだった。
大型の上水道用配水池は現役を退いたあとも歴史的建造物の価値が見直され、有形文化財や土木遺産として保存される動きもあるが、団地単位の給水塔では老朽化とともに取り壊されてしまうのがふつうだ。そんな中、あえて壊さず残しているようにも見えるこの一本の給水塔は「保存」の可能性を示唆したものだろうか。
船橋市の再開発計画についての資料がネット上にあり、“船橋の人々と自然を活かしたサステナブルな街づくり”というコンセプトのもと「グリーンインフラによる雨水対策災害に備えた防災対策」「レジリエンス」というキーワードが掲載されていたので、従来の効率優先の再開発とは異なる意欲的な取り組みに期待が持てそうだ。
あるいはこの給水塔も必要な耐震対策などがなされた上で、単なる景観上のレガシーというだけでなく、災害時の用水タンクという新しい役割を与えられるのだろうか。
給水塔の保存の動きにマニアたちの活動も一役買っているのかもしれない。



隣は船橋市の市場

団地は解体工事中

給水塔のまわりは瓦礫が広がる。



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