水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

大堤池(鳥取県鳥取)

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10月初旬の「うぐい突き」は一般参加もできる地元の風物詩。

戦国時代に農業用ため池として築造された大堤池。
現在も池を大切に守る取り組みとして、毎年秋に「うぐい突き」と呼ばれる水抜きと魚捕りがいっしょになったイベントが行われています。
人間の手で造られた池は、人が手をかけないでいると数十年、数百年のうちに元の陸地に還ってしまいます。管理されている大きなダムでも寿命は50〜100年。天然湖でさえ寿命があります。
池の底に堆積する泥やごみは、池の本来の機能である貯水量の低下を招くだけでなく、底近くの酸素不足を引き起こし、水質悪化にもつながってしまいます。とはいっても年に一回水を抜くというのは、池管理者にとって想像以上の負担。
そこで春に放流したフナやコイを収穫するというお祭りを開くことによって地域のみんなに楽しみながら手伝ってもらえる。それだけでなく、たくさんの人がわいわい言いながら泥んこになって水の抜けた池中を歩きまわり魚と格闘しているあいだに、池底の土が攪拌されて酸素補給されるという付随効果も大きいのです。

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10月初旬、水抜きの日は「うぐい突き」の名のもと市のホームページでも開催要項が知らされます。
当日の午前8時に集まった人たちは、釣り大会をしながら池の水が抜けるのを待ち、10時半ごろから地元農家による「うぐい突き」の実演。
ウグイ突き、といっても魚名のウグイではなく、竹で編んだ篭のような漁具のことを地域では「うぐい」と呼んでいるそうで、漁獲される魚はフナ、コイ。
実演が終わる11時ごろからメインイベント。希望者によるうぐい突き体験、つかみ獲りがはじまり、その後、収穫された魚を鯉こくなどにしてふるまわれます。
このような催しは昔は全国あちこちで見られましたが、現在は数えるほどになってしまいました。ましてや大堤池のように無料で一般参加者に体験させてくれるというのは、ほんとうに少ないと思います。
池底の泥を攪拌させるため、たらい舟のレースを開催する山形県の大谷地沼や、ヨーイドンのかけ声のもと勇壮な大人たちが一斉に「オオギ」と呼ばれる竹製の篭状の漁具を手に水抜きした池へと飛び込む滋賀県の八楽溜。
この八楽溜の「オオギ」と、ここ大堤池での水抜き漁で使われる「ウグイ」とほぼ同じものと考えられます。

bunbun.hatenablog.com
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マークした場所に案内板。