たきがわだむ。
地図上では大きな池ではなかったので、「ダム」といっても農業用ため池がちょっと大きくなった程度のものを想像していたが、かなり立派な重力式コンクリートダムで驚いた。県営の多目的ダムであった。
2017年に初めて訪れたときは軽トラックが五、六台も集結してアプローチ路の草刈りをしていた。農家の人たちが管理に深く携わっているようだ。
2019年春の再訪は偶然だった。県道を走っているとき、材木を満載した大型トラックの後ろをずっと走っていて眠くなってきたとき、ふと、滝川ダムの入口を示す看板が目に入ってハンドルを切った。
インレット側に進みクルマをおりると、へらぶなの匂い(?)が風にのってきた。
釣り禁止エリアと投げ釣り・ボート禁止が記された湖面利用案内があったので(下写真)、ボートスロープあたりと、管理所横の階段下あたりでのエサ釣りは公認ということだ。のんびりしていていい場所だったので、クルマに常備している簡易へらシステムを出すことにした。
釣り座を構えてまもなく、対岸で水面を割る破裂音とともに大きなもじりがあった。二回目のもじりで、はっきり魚体が見えた。黒々と背の張った大型のへらぶな。ゆうに40以上はありそうだった。
もじりは沖目か対岸ばかりでこちらに寄ってくる様子はなかったものの、ウキのまわりに泡づけが出はじめ、サワリ、つづいてアタリが。
30分に一度は弱いアタリがあるが、乗ってこない。雰囲気からジャミではなく、へらぶなだろうと期待は募るが、釣らないことには正体が分からぬ。
一時間ほどすると、地元のおじさんがやって来た。果たして、へらぶな釣り師だった。
「くさいエサより白いエサがいいよ」とのアドバイス。前日、三時間竿を出してもだめだったそうだ。ウキの下にいる連中はどうも難敵らしい。
このおじさんが帰ったあと、様子見にやって来たもうひとりのおじさんも「くさいエサは」といっていた。ダンゴのことをこのへんでは、そう呼ぶようだ。このおじさんも「くさいエサは食わん」とおしえてくれたが、車載道具なのでエサの種類はあまりなく、白いといえばグルテンぐらい。両グルテンを試すと、確かにアタリがとりやすくなった。とはいっても、やはり乗ってこない。
眠気覚ましに立ち寄っただけのつもりが、けっきょく四時間粘った。
一度、乗ったと思ったらスッポ抜けた。スッポ抜けが大きくて糸がぐちゃぐちゃになってしまった。なかなかのサイズのウロコが付いていた。これをもって、へらぶなのアタリはなくなり終盤はジャミの気配に変わった。
そしてやっとこさ釣れたのは、なんとニジマス! 終了まぎわに少しサイズアップしたもう一尾。
人もクルマもほとんど来ないし、ときおり強い風が湖面をざわつかせるぐらいで、たえずウグイスの声が新緑の谷間に響いていた。
堰体を見渡せる場所に駐車場あり。ダムカード配布対象ダム。
同名のダムは、秋田県と福島県にもある。
マークした場所は駐車スペース。