水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

赤蔵ヶ池(愛媛県久万高原)

【あぞがいけ / 鵺池 / 赤蔵ケ池農村公園】

妖怪伝説のある天然湖沼ベースの溜め池

平均標高800mでスキー場もある久万高原町。ブランド米「久万清流米」を育てる水源として利水されているのが湖面標高870mの赤蔵ケ池である。農林水産省の全国ため池100選にも選定された現役の農業用ため池ではあるが、山頂のくぼ地に湧水がたまった天然湖沼ベースの池でもあり、オオイトトンボ、クロゲンゴロウ、ガムシの生息地として環境省の日本の重要湿地500にも選定。
そんな赤蔵ヶ池には怪鳥「鵺(ぬえ)」の池伝説も。

京を恐怖に陥れた妖怪「鵺(ぬえ)」の根城

奈良時代の文献にも登場

「鴨住ヶ池」「阿蔵ヶ池」「遊ヶ池」などの名称で奈良時代以降の文献にも登場し、特に夜な夜な京都まで渡って都人を恐怖に陥れた妖怪「鵺(ぬえ)」の根城だった「安曽布ヶ池」はこの池のことである。文献では、源頼政がこの鵺を調伏。じつはこの鵺の正体は頼政の出世を願う母の生き霊のようなものだったという話も。母は自ら退治されることで息子の出世を実現させるわけだが、死んで鵺の血で池は真っ赤になったという。
下の写真は赤蔵神社の社殿に掲げられたもの。


【参考】鵺伝説(久万高原オフィシャルサイトより抜粋)

頼政の母~二箆(ふたつの) 赤蔵ヶ池(あぞがいけ)~

 昔々のお話。平家が栄えて、源氏の侍は出世できなかった時代に、源頼政という侍がいました。
 頼政の母は、出世できない姿を見るのがつらくて、都を捨て、里のある美川へ帰り、二箆の地に隠れ住みました。来る日も来る日も息子が手柄を立てて出世することを祈り、頼政を励まそうと二箆にだけ生えている矢竹で矢を作って送ってあげることを思いつきました。
 祈っても状況は悪化するばかり・・・。ついに、頼政の母は赤蔵ヶ池の主、水神竜王様にお願いすることにしました。その日から断食し、33日の満願の日、赤蔵ヶ池へと向かいました。
 そして、竜王様の力で、顔は猿、体は虎、しっぽは蛇、それに羽まで生えた鵺(ぬえ)となり、京の都へと旅立ちました。
 鵺の声は、毎夜毎夜、京の都にこだまし、人々を苦しめましたが、平家の兵では退治できません。そこで、天皇は頼政に鵺退治を命じました。
 母の作った矢で鵺を射抜いた頼政は、都の英雄になりました。しかし、喜んでくれる母は赤蔵ヶ池にすいこまれ、二度と浮かんでは来なかった・・・。

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鵺(歌川国芳・画)

絵の上部に描かれた山は赤蔵ケ池であろうか。


赤蔵神社

池の南東800mの集落内に立地。赤蔵大神宮とも。山里には似つかわしくないほど雅びな鳥居や社殿は、京文化ゆかりのものだろう。
この神社に残された伝説は息子の出世を願い、この神社に祈願をし赤蔵ヶ池で水行をしたというもの。息子にヌエ退治の決め手となる武器「矢竹」を送ったという。



 

赤蔵ヶ池の形態と景観

山頂台地に立地

鬱蒼とした山の頂きにこのような池ができたのは、まさに奇跡。左下に見えるのが駐車場。



湧水が水源

流出入河川は見あたらず、水源は湧水による。


堰き止め部

人の手による堤は不明瞭であるが、下の写真には取水設備のような人工物と堤らしきものが右側に確認できる。この部分だけジュンサイがなく黒い水面が露出しているのは、取水の影響によるものだろうか。


流出先の面河川

仁淀川の支流にあたる面河川に、池から流出している沢がある。取水運用などこの沢を通して行うしかないと思うが、どのような運用がなされているのか調査継続してみたい。
下の写真は流出河川の合流ポイントではないが、赤蔵ヶ池を頂いた台地と面河川の高低差や地形を把握するため撮影した。


 

生息する動植物・魚類

ジュンサイ、ドブシジミ

西日本では希少なジュンサイが池一面に。ドブシジミも生息
きれいな水にしか生息できないジュンサイが水面を埋め尽くすほどに繁茂。
一方、富栄養化した泥底を好むというドブシジミも生息。

オオイトトンボ、クロゲンゴロウ、ガムシ

これらの生き物の生息が「日本の重要湿地500の選定」の際に考慮された。



 

赤蔵ヶ池の設備

駐車場と案内板

舗装道路も整備され、駐車場20台とトイレ、あずまやもある。(
2015年撮影)


広場



 

赤蔵ヶ池へのアクセス

拠点は道の駅 みかわ

道の駅の案内板に、赤蔵ヶ池の記載あり。面河川の渓流に親しめる道の駅でもある。


道の駅からは15kmほど

道幅は狭いところが多いが舗装林道でアクセスできる。途中、分岐には「赤蔵ヶ池」を示す道標も置かれている。2023年11月に再訪しようとした際は道路復旧工事で通行止めだった。



赤蔵ヶ池林道

赤蔵ヶ池の名を冠している林道だけに池に行けるのかと思ってダート路を進むも、あと少しのところで林道終点になってしまい、池にはたどり着けなかった。
途中に石鎚山や道の駅の眺望ポイントあり。



 

Googleマップ

マークした場所は赤蔵ヶ池入口の分岐。