湯河原梅林のポスターに写っている池。
山池攻略のためのオフシーズントレーニングの一環で二ヶ月前にも行ったばかりの幕山。幕山といえば関東南部におけるボルダリングスポットで知られるが、山池攻略といっても岩登りのトレーニングをしているわけではなく、ただ歩いているだけである。
今回は梅の開花期ということもあって、幕山がまとう浴衣のような湯河原梅林は早見客でにぎわっていた。通常期とちがって、この時期だけは入園料200円が必要となる。
人が多すぎて思うように進めないので、早々に登山はやめて駅まで歩いて戻ることにした。女子トイレも行列。妻を待っているあいだ、案内マップを見るともなく見ていると、「池」という文字を見つけた。ただ池は二ヶ月前に攻略した。女子トイレはなかなか順番がまわってこないようで、あまりの手持ち無沙汰に看板をじっくり見直していると、あれれ。行った池と場所が違うような・・。
そういえば駅の跨線橋にずらずらっと貼ってあった湯河原梅林のポスターには手前に池が写っていたが、二ヶ月前に見た池とどうも雰囲気が違っていた。
ではまだ会っていない「本命の池」が別に?
また、やってしまった節穴。
園内を流れる沢をたどっていく。こちらまで足をのばす人はあまりいない。
ポスターになるような池なら、こんなに人が少ないのも変じゃない? と妻に言われたが、先にかすかな池の匂い。
水路はいったん地中に途絶えたが、上を通る遊歩道に上がると池があった。確かにあった。ああ、また節穴をやってしまった。
というか、トイレの行列がなかったらこの池の存在も知らずにむなしく帰ることになるところだった。
帰路、入園受付の人に池の名前を訊いてみると、知らないとのことだった。ポスターになっている池ですよねと言うと、
「あら、よく分りましたね」
気づく人はほとんどいないそうだ。そりゃそうだろう。
フォトジェニックは難しいのでフォトバッシュで
遊歩道沿いにあるので通行する人はときどきいるものの、池を立ち止まったり伸び上がったりして愛でたり、フォトジェニックを追求してしつこく写真を撮るような人もいなかった。
訪れたときは傾いだ午後の太陽が山に隠れる時間帯に入っていたため、強い明暗コントラストが池をバッサリ断ち切り、淡い梅色の中にたたずむ池の空気感を写真で捉えることはできなかった。
写真は難しいものの、構造はなかなか興味深い池である。
池岸に這いつくばったり、しゃがみこんだりしながら撮影していると、何人もの人がスマホをかざして池の写真を撮っているではないか。私の奇行がまき餌となって人が釣れたのだろうか。よかったな、池。
池の構造を見る
ポスターに採用されているにもかかわらず、フォトジェニックな池としては認知されていない。
時期と時間を厳選しなければポスターのような写真は得られない。会って、うわあ、となるかといえば、町自体がそれほど推しイケにしていないことからもうかがえる。
池には錦鯉が泳いでおり、土地の材料を使って人工的に造園された庭池のように見える。しかしポンプという生命維持装置を付けている池でもなさそう。
明瞭な流れ込みは見あたらないが、地形と水質から水源は池の北側のようだ。池の一角にクリアーな水があった。伏流水によるものとうかがえる。
遊歩道がちょうど池の堤になっているかっこうで、水源と反対側の池尻側に吐き出し口があった。しかしよく見ないと分からないぐらいの穴。ここでも穴をのぞきこもうと水面に顔が付くぐらい這いつくばっていると子どもが寄ってきた。真似するので変なことやめてください、と親の目が語っているようだった。
遊歩道の反対側には吐き出しからの小さな沢が原っぱの斜面を下っていた。
池の位置をピンポイントでマークした