水辺遍路

訪れた全国1万1,100の池やダムを独自の視点で紹介

鳥の海(宮城県亘理)

とりのうみ。
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地図を見て、あれ? と思った。
阿武隈川の河口に寄り添うような周囲6kmクラスの大きな汽水湖である鳥の海は、確かに行った記憶がある。しかも東北の海岸を襲ったあの東日本大震災の年だ。
それなのに鳥の海のページがない。
過去の写真をたぐっても見つからない。
原発事故の影響が今なお現在進行形といって過言でない浜通り周辺は、ものものしい警備で立ち入りできないエリアもあるが、鳥の海は福島第一原発から70km近く離れていて復興も進んでいる。何より鳥の海のつかみどころのない茫漠としたイメージが記憶に残っているが、記憶違いだろうか。
2017年夏に再訪してみると、やはり記憶から大きくははずれない景観があった。しかし同時に、なぜ写真も撮らず、記事にもしなかったのかが分かった。
ほんとうに、とらえどころがないのである。海と言ってしまえば、海にも見える。かといって、絵心をくすぐられる渚や入り江があるわけでもない。
家が立ち、コンクリートの岸壁があり、ただ茫漠としているのである。おまけに震災の年は、流入河川の多く、といっても用水路みたいな小河川が多いのだが、津波の後遺症なのか黄土色に濁って悪臭を放ち、目をふさぎたくなるようなものまで浮いていた。
写真も撮れなかったのだと気がついた。あれから六年半たっても、鳥の海はやはり茫漠としていた。
しかし、そこかしこに太公望が釣り糸を垂らした姿が見られた。釣り場としては完全復興している。ハゼ釣りだろうか、毎日、手軽な道具で釣りに来ているような、なごやかな雰囲気。
海との接続部近くはカレイやシーバスも入ってくることがあるようだ。
池の真ん中にある島には遊歩橋も渡され、湿地が保全されている。蛭塚というちょっと気持ちのわるい名前のこの島には、負の歴史もあるようだ。
池畔に日帰り温泉施設あり。
日本の重要湿地500選。

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