海岸から斜面をかけのぼる棚田の上に造られた溜め池。
小さな島の池には、ときどき、はっとさせられるような池がある。そんな池に出会えたときうれしさは、離島の池めぐりの醍醐味にちがいない。
とはいってもどこか「再生」の匂い。護岸がすべてコンクリート化されているだろうか。
池の下には確かに棚田が広がっているが、これは一度は放棄され荒れてしまったという。
稲作の復活へと取り組みがつづくが、単に稲を植えればいいというものではなく、ため池を含む水路の整備、田が水漏れしないよう畦の整備、農作業を行うための道の整備などハード面はもちろん、収穫米の販路の開拓などハードルは高く、短時間で進められるものではない。
まずは荒れ地に戻らぬよう草刈りを行うゾーン、次に水は張れないものの果樹などの耕作を行うゾーン、そして条件の整ったものから稲作というふうにゾーンに分けて再生を進めている。一度、放棄されてしまった水田は、簡単には元にはもどらない。
元気な池がある土地は、米も美味いし、酒も美味い。それは長いあいだ、途切れることなく誰かが手を入れて維持をしてきたという、膨大な時間遺産でもある。